今回はスタジオJinから販売されているHusky三脚スタジオJinモデルをご紹介したいと思います。Husky三脚自体は非常に古くからある物ですので、なにを今さらという方も多いと思いますが、最近の若い方々には逆に新鮮に見えるのではないでしょうか?早速見ていきましょう。
外観
最新のカーボン三脚と比較するとデザインはかなりノスタルジックな外観です。
Husky三脚(一体型)の基本仕様
HUSKY3段三脚は、いまどき珍しくネジ一本に至るまですべての部品が日本製。パイプはアルミ合金製で、パイプ径は太い順から31.8mm、28.6mm、25.4mmとなっています。空転防止機能の無い脚ですので、ロックナットの固定や脚の伸縮には慣れが必要です。最近の三脚に慣れている人にとっては扱いにくいと感じるかもしれません。段数が増えれば増えるほど扱いにくいです。
石突は嵌め込み式のゴム製。スパイクなど他の石突には交換できません。
雲台込みの重量は3.7kg。最近のカーボン三脚と自由雲台の組み合わせと比べたら、ズッシリ重いです。この重さが許容範囲かどうかが購入の第一の分かれ目となりそうです。
ギア付きエレベーター式のセンターポール(以下、EV)は37cm伸縮可能で、EVを目一杯まで上げると最大高は198cmまで伸ばすことができます。ただしあくまでも伸ばせるというだけで、ブレの観点からEVの伸ばしすぎはお勧めしません。
EVを逆付けすることによって、ローアングルから撮影することが可能となります。
EVを取り外す時はEV底の三脚ストラップを外して、EVストッパーを緩めれば引き抜くことができます。三脚ストラップはEV底の内側の金具を指で引っ掛けて、少しズラすだけで簡単に外せます。
EVストッパーを緩めるとスカスカになるので、EV操作時はクランクギアハンドルから手を離すと凄い勢いで機材が落下します。最悪の場合、カメラの故障に繋がるので注意が必要です。
この問題を解消したい方はこちらの記事をご覧ください。
EVを元に戻す際は、クランクギアハンドルを時計の10時の方向にセットしてEVを差し込んで戻せば、初期位置に戻すことができます。
雲台部は一般的な3ウェイ雲台です。コマ締め方式のロック方式を採用しており、パン棒を締め込んだときのズレがほとんどありません。市販の3WAY雲台の中で一二を争うくらい固定力が強く、雲台のみのモデルも人気が高いです。
このようにHuskyにも分離式三脚はありますが、それでも一体型をラインナップし続ける理由は、雲台が緩まないように、そして高い剛性を発揮するためです。私は一体型も分離型も持っていますが、機材を装着して三脚を肩に担ぐ時などは、一体型の方が圧倒的に安心感があります。ブレの差は体感できるものではありませんが、理論上良くなることはあっても、悪くなることは無いと思います。
スタジオJinモデルの仕様
トヨ商事のHUSKYとスタジオJinが取り扱うKIRKのクランプがコラボした三脚がスタジオJinモデルです。後改造ではなく、トヨ商事が出荷時点からカメラ台にコルクシートを張らずに、KIRKクランプ専用のステンレス製の回転防止ピンを埋め込み加工しています。(ピンはネジですので簡単に取り外し可能です)もちろんトヨ商事でのメーカー保障やメンテナンス・オーバーホールを受けることができます。
付属するクランプは2.6インチで、UNC1/4-20細ネジ仕様。スタジオJinがKIRKに特別発注したオリジナルモデル(SQRC-HUSKY2.6)です。この三脚に何の意味もない六角レンチを内臓しているのはご愛敬。
空転防止用ピンに合わせた穴がクランプ裏に三ヶ所空いているため、三方向に90度ずつ回転させることができます。固定⇄解除は雲台の締め付けホイールを使用するため、クランプの向きを工具なしで変更できます。
ちなみに私は旧クランプ(QRC-HUSKY)でしたが、新クランプに交換しました。新旧クランプに互換性があるのが嬉しいですね。
クランプのノブが短くなったので機材によっては使いにくく感じることもありますが、より脱着がスピーディになりました。どちらも使ってみた感想としては、新クランプの方が総合的に気に入りました。
カスタムパーツもある!
スタジオJinからカスタムパーツが販売されています。以前ご紹介したウッドパン棒です。元はアメリカのデザインの製品と日本の伝統工芸技術との融合が非常に魅力的だと思います。
3段を4段にカスタムできます。通称「ハイボーイ」と呼ばれるモデルです。使う部品はL-3、L-5、L-8、L-14、L-15を各3個ずつ。費用は26,400円(税抜)と決して安くはありませんが、最大高が213cm(EV使用時250cm)になるのは魅力的です。一番細い脚のパイプ径は22.2mm、重さは4.2kg。
さらに5段というモデルもありますが、重さは増し(4.5kg)、一番下のパイプ径は19mmとかなり細くなります。ここまで細くなるとさすがにお勧めできません。
メンテナンスに必要な工具
三脚のメンテナンスに必要な道具は13mmと1/2inch六角ボルトを回せるスパナやメガネレンチ。雲台をEVから取り外す場合はスナップリングプライヤーが必要です。
出来るだけ工具は品質の良いものを選びましょう。それにしてもweraのコンビネーションレンチは世界一格好良いメガネスパナだと思います。
石突をはずすなら、ドライヤーもしくはヒートガンが必要です。ドライヤーで温めることにより、簡単に外せるようになります。
メンテナンス方法
使用環境や使用頻度によりますが、2〜3年に一度くらいは、分解清掃・グリースアップした方が良いと思います。グリースアップする際は必ず古いグリースを取り除いてください。古いグリースを取り除くには中性石鹸で洗い流すか、ブレーキパーツクリーナー(プラスチックセーフなど樹脂への攻撃性の低いもの)を用いてウエスなどで汚れや水分を綺麗に拭き取りましょう。
Husky三脚&雲台のメンテナンスグリースとしてスタジオJinでは「超耐久性粘着グリース」が紹介されています。
HUSKYでは製造時からメーカーオーバーホール時も含めてすべてこのグリースが使用されています。スタジオJin商品ページより
ただ私がつい先日トヨ商事に直接電話で問い合わせて伺った際には「リチウム系グリースであれば良い。実際にうちではリチウム系グリースを使っている」とのことです。スタジオJinで販売されているグリースはカルシウム石鹸基グリースですので、ちょっと話しが食い違うのですが、品質の良いグリースであればそこまで神経質になる必要はないと思います。
実は3年ほど色々なグリースを脚ごとに変えて品質性能テストを行なっています。その中で三脚のメンテナンスとしてお勧めのグリースをふたつご紹介させていただきます。
1,SHIMANO プレミアムグリース
カルシウム石鹸基グリースで、ちょう度も色もスタジオJinの「超耐久性粘着グリース」に似たグリースです。屋外での耐久テストを行いましたが、品質までそっくり似ています。価格もそんなに高くないのでお勧めです。
2,SuperLube 多目的グリース
世界中のあらゆる業界・用途で実績があるグリースです。H1グレードを取得しているので、屋内や水辺でも安心して使用できます。分離・蒸発が殆どなく優れた耐久性を発揮します。また、樹脂・ゴムへの適合目的としたシリコングリースの代替になります。少しお値段が高いですが、グリースで迷ったらまずは試してみる事をお勧めします。
グリースは可動部や接続部の各部に薄〜く塗布するだけです。シールリムーバーツールで少しずつ付けて、使い捨ての指サックやビニール手袋で伸ばしてやると付けすぎることがなくて良いと思います。シールリムーバーツールは耳かきでも代用できます。
Husky三脚ユーザーにお勧めアイテム
Husky三脚はアルミ合金製です。夏は猛烈に熱くなり、冬は凍えるような冷たさになります。手を守るために三脚グリップは必需品と言えます。先日紹介したケンコートキナー(SLIK)の三脚グリップは、値段が手頃で品質も良いので超おすすめです。
Huskyの中で一番「しょうもないな!」と思うのが三脚ストラップです。そこそこ重い三脚なのにベルトが細すぎて肩に食い込んで痛い…。滑りやすい素材ですので、これなら付いていない方がマシかもしれません。
また雲台も「凶器かな?」と思うような重さと形状ですので裸で持ち歩くと、万が一周囲の人にぶつかったら大きな事故につながりかねません。そのためHusky三脚を持ち歩く場合は三脚バッグが必要となります。
Husky4段まででしたら以前ご紹介した「一澤帆布」の三脚バッグが最高に格好良いので、そちらをHusky用に愛用しています。
ただ雲台のパン棒が飛び出してしまいます。これまで我慢して使ってきたのですが、やっぱりちょっといただけませんよね。
先ほどの三脚グリップを活用できそうですので、ちょっと考えてみましょう。
面ファスナーやナイロンの小袋を切り貼りしてグリップに取り付けます。
このように一本だけ外して三脚グリップに貼り付けます。この三脚グリップは洗濯できるので、万が一グリースで汚れても安心です。
これできちんと収納できるようになりました。一澤帆布の三脚バッグはベルトが太く、滑りにくい素材ですので、Husuky純正ストラップよりも断然持ち歩きやすいです。
ケンコートキナーの三脚グリップと一澤帆布の三脚バッグ、このふたつはHuskyユーザーには超おすすめです。
サポート
大抵の故障に関しては部品販売されているので、銀一やヨドバシカメラなど大手カメラ専門店で取り寄せ、購入できます。よく交換されるような部品に関しては普通に販売ページや在庫があったりします。
しかし雲台プレートなど交換が難しい箇所の修理や、オーバーホールなどはメーカーでやってもらった方が良いでしょう。
修理やオーバーホールはスタジオJinが受け付けています。
動画で見るhusky ハスキー雲台一体型 スタジオJinモデル
長いので閲覧注意。よほど暇な人だけご覧ください。
まとめ
さて、軽く書こうと思っていたのですが、気付けばめちゃくちゃ長くなってしまいました。それだけこの三脚が魅力的で、私の好みなんだと思います。
デザインの古さも一周回って格好良いですし、こんな数十年前に設計された骨董品のような三脚が、今尚第一線で活躍しているというのが凄いと思います。
スタジオJinモデルはマニアにとっては価値ある一本ですが、通常のHusky三脚にアルカスイス互換クランプを装着するという構成でも十分です。
メーカーHP:【HUSKY】ハスキー 3段 KIRK Model オリジナル三脚
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