物撮りテクニック その① ブツ撮りの準備 / 物撮りテクニック その② 背景編 / 物撮りテクニック その③ 基礎の基礎
さて前回の続きです。今回はブツ撮りに適したレンズについて書いていきたいと思います。
ブツ撮りは中望遠が望ましい理由
レンズの特性として広角レンズは遠近感を強調し、望遠レンズは遠近感を無くします。
たとえば上のように14mmや24mm(35mm換算)といった広角レンズで被写体に寄って撮影してしまうと、被写体の形状がかなり変わってしまいます。これも写真技法においてひとつの表現ではありますが、もし商品説明用の写真であれば適切な表現方法とはいえません。35mm〜50mmでも実際よりもややふっくらとした形状で、70mm辺りから実際に目で見た形状に近くなります。135mmあたりから平面的に見え始め、のっぺりとした印象になります。200mmになると立体感が失われ始めるので、ブツ撮りではちょっと使いにくいかなと思います。
前に85mm〜105mm(35mm換算)辺りがもっとも適していると書いたのは、被写体の立体感を残しつつ、正しい形状を保つ焦点距離であるからです。
ずばりブツ撮りのお勧めレンズは?
前回の記事ではブツ撮りは被写体に寄って撮影する必要があるため、マクロレンズが良いと書きました。つまり85mm〜105mm(35mm換算)のマクロレンズを買えば、ブツ撮りでは失敗しないということです。
ただし撮影スペースが狭い場合、ちょっと大きめの被写体だと105mmでは後ろに下がれず、使い辛いと思うことがあります。撮影スペースが狭いという方は85mmか90mmにされた方が良いかもしれません。
あとはマニュアルレンズになりますが、シフトレンズという選択肢もあります。通常、奥行きがある被写体を撮影した場合、完璧にパンフォーカスにならず、ボケてしまうものです。
デザイン雑誌「MdN」のかなり昔の新年特別号を被写体にしました。解放F2.8で撮っているため、随分ピント範囲が浅いです。これを絞りを変えずにシフトレンズで撮影すると…
このように解放F値でも隅々までピントを合わせることが可能です。絞りこまなくてもピントが合うということは、回折を回避でき、画質の良い絞り値で撮影できるということです。ブツ撮りにおいては非常に強力な武器となります。また通常では鏡やガラスを撮影する場合、正面にカメラを構えると被写体にカメラが写り込んでしまいます。
しかしシフトレンズがあれば、構図をほとんど変えずに写り込みを避けることが可能です。
さて今回はブツ撮り用のレンズについて書きました。しかしあくまでもブツ撮りしやすいというだけで、これが正解ということではありません。それこそイメージ撮影用でしたら、ボケ味の方が大事だったりしますので、まずは手持ちのレンズの中からあれこれ試してみられると良いと思います。
今回も最後にひとつ面白い作例を載せておきます。
この写真を撮るための撮影レシピは、とっても簡単です。
- まずは可愛い雰囲気を出したかったので、背景紙はピンクの画用紙を採用しました。
- レンズの前に100円ショップで買ったラッピング用の緩衝材や留め具をフィルターにします。
- ストロボは2灯用意し、1灯はフィルターに、もう1灯は被写体にセットします。
- 絞りはピントが全体的に合うくらいに設定。シャッタースピードはあまり気にする必要はありません。今回は1.6秒にしました。
- フィルターを盛り過ぎると被写体が眠くなる場合があります。そういう時はフィルターなしの状態でも1枚撮影しておき、後でフォトショップで合成して被写体をハッキリさせることができます。撮影結果を見ながらフィルター有無カットが必要か決めましょう。
如何でしたでしょうか?まだまだブツ撮りシリーズは続きます!
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