物撮りテクニック その⑩ブツ撮りまとめ

今回でブツ撮りシリーズはいよいよ最終回となりました。お読みくださりありがとうございました。そこまで難しいことは書いていないつもりですので、皆様のブツ撮り入門となれば幸いです。

それではこれまで書いてきたことを振り返りつつ、伝えきれなかったことを補足したいと思います。

被写体を綺麗にする

さてネットショップに下の2本のレンズが販売されています。ショップの評価では状態同じで、価格も同じです。あなたはどちらを購入しますか?

大半の方がホコリの付いてない右側を選ぶと思います。こちらはどちらも同じレンズで片方はホコリが付いたまま撮影し、もう片方は綺麗に拭き取っただけです。

ブツ撮りの主役は被写体です。どれだけ撮影のスキルが高くても、被写体がホコリだらけだったら、その魅力は半減です。ブツ撮りの第一歩であるテクニックは「被写体をいかに綺麗な状態で撮影台に置けるか」です。また被写体だけではなく、撮影台や背景の小物の状態にも気を配ることが大切です。

ちなみに上の写真はスマホのカメラアプリ「Camera+」で撮影したものです。

このアプリ、有料なんですけどシャッタースピードやWB、マクロ撮影、タイマーなどの機能が付いていまして、長秒撮影にすると低ISO感度で撮影可能なため、高画質で記録できます。ヤフオクやメルカリに出品するためのブツ撮りでしたら、何も高いカメラやレンズを買わなくてもこのアプリで十分じゃないかな?と思います。

話が逸れてしまいましたが、ホコリを吹き飛ばすためのブロアー、汚れを拭き取るためのノンアルコールのウエットティッシュとメガネ用クロスを用意しておきましょう。ブロアーは風圧が強い方がいいので、先が細いベルジョンがオススメです。

撮影の準備の大切さについては「物撮りテクニック その① ブツ撮りの準備」で詳しく書いていますので、ぜひ読んでみてください。

背景にこだわる

ブツ撮りでは画像から商品だけ切り抜いて、何らかの画像と合成することが多いです。例えば白バックで撮影した被写体を切り抜いて、黒い画像と合成すると、いかにも合成したことがバレやすく、浮いて見えます。自然に合成したい場合は、合成する画像の色に合わせて背景紙を選ぶのが基本といえます。ただ用途が不明な場合は汎用性を考慮して白バックで撮ることが多いですね。爽やかで清潔感もありますし。

切り抜いて使わない場合は、単色の背景ばかりでは味気なく感じさせます。あくまでも主役は被写体ですが、主役を引き立たせる背景作りも考えてみると面白いものです。

使える背景はアイデア次第で無限大にありますから、色々なものを使ってチャレンジしてみてください。背景のアイデアについては「物撮りテクニック その② 背景編」で詳しく書いていますので、ぜひ読んでみてください。

撮影時の注意点

ブツ撮りの基礎はいくつかあります。その中でも重要となるのは以下の8つです。

  1. しっかりした三脚を使う
  2. レリーズケーブル・リモコンシャッターを使う
  3. ボディ・レンズの手振れ補正機能はOFFにする
  4. 一眼レフカメラの場合はミラーアップ撮影をする
  5. レンズはなるべくマクロレンズを使う
  6. 適切な絞り値で撮影する
  7. ISO感度に頼らない
  8. ピント合わせはライブビュー拡大する

この項目をひとつひとつ詳しく知りたい方は「物撮りテクニック その③ 基礎の基礎」をご覧ください。

レンズは中望遠マクロと標準ズームがあればとりあえずOK

レンズの特性として広角レンズは遠近感を強調し、望遠レンズは遠近感を無くします。

たとえば上のように14mmや24mm(35mm換算)といった広角レンズで被写体に寄って撮影してしまうと、被写体の形状がかなり変わってしまいます。これも写真技法においてひとつの表現ではありますが、もし商品説明用の写真であれば適切な表現方法とはいえません。35mm〜50mmでも実際よりもややふっくらとした形状となります。特に縦長のボトルなどを撮影する場合は、広角で撮ると歪みが出やすいので注意が必要です。

70mm辺りから実際に目で見た形状に近くなり、ブツ撮りに適した焦点距離となります。135mmあたりから平面的に見え始め、200mmになると立体感が失われ始めるので、ブツ撮りではちょっと使いにくいかなと思います。

85mm〜105mm(35mm換算)辺りの中望遠域は、被写体の立体感を残しつつ、正しい形状を保つ焦点距離です。そして被写体に寄れる中望遠マクロレンズが、もっともブツ撮りに適していると言えます。

ただ俯瞰撮影は単焦点レンズで撮影するのは非常に大変です。また中望遠では洋服などを撮影する際、画角に入りきらないので24-70mmあたりをカバーしたズームレンズがあると、あらゆるブツ撮りに対応できていいと思います。

さらに詳しく知りたいという方は「物撮りテクニック その④ ブツ撮りに適したレンズ選び」をご覧ください。

ストロボは2台あった方が良い。1台ならレフ板で代用する

ストロボはブツ撮りでは必須と言えます。クリップオンで構いませんので、無線(スレーブ発光でも可)でコントロールできるストロボを2個持っておくと表現の幅が広がります。メーカー純正じゃなければ結構安価なものがあります。

またストロボの光を非常に柔らかくしてくれる魔法のアクセサリー、ソフトボックスも欲しいところです。ストロボ初心者でもソフトボックスさえあれば、それっぽい写真が撮れると言っても過言ではありません。値段はピンキリですが、安いものでもそれなりに使えます。

1台しかストロボがなく、かつ全体的に光を回したい場合、ストロボの位置は前方からになります。しかしそうすると反射する被写体だと中央付近にハイライトが出来てしまって、少し見苦しい写真になってしまいます。

これを避けるためにサイドから光を当てると、ハイライトの位置は良いのですが、今度は反対側がかなり暗くなってしまいました。こんな時に反対側にレフ板を置いてやると、影を和らげてくれます。

レフ板についてもっと知りたい方は「物撮りテクニック その⑤ レフ板を使ったブツ撮り」をご覧ください。

本を撮影する時のコツ

本を撮影する時は、他の被写体と違ってちょっとしたコツが必要です。そのコツは5つ。

  1. 背景は白バック(清潔感がある)
  2. 帯・カバー・本を揃える
  3. 平置きする時は、アクリルブロック(アクリルキューブ)などを使って、本を撮影台から離す(浮かす)と、強い影が出ないように撮影できる。
  4. 85mm〜105mm(35mm換算)の焦点距離で撮影する
  5. 本が開いてしまう場合は細い釣り糸で縛る。(撮影後、フォトショップで消す)

例えば上のように正面から撮影すると、一体この本がどのくらいの厚みなのかまったく伝わりません。何枚かパターンがあるうちの1枚であれば問題ないのですが、この画像をメインに使うのはどうかな?と思います。

本のメイン画像にはこういった構図が伝わりやすくて良いと思います。

本の撮影方法についてもっと詳しく知りたい方は「物撮りテクニック その⑥ 本のブツ撮り」をご覧ください。

一筋縄ではいかない難しいブツ撮り

鏡面の被写体は周囲のものが写り込んでしまうため、ブツ撮りの中でも難易度が高めと言えます。また液体洗剤の詰め替え袋やお菓子の外装など、形が安定しないプラ製のパッケージも綺麗に撮影するにはコツが必要です。

とは言っても対策はとっても簡単。スプーンやフォークなど銀食器やミラー、グラス、ワインなどの瓶といった鏡面であれば、映り込む特性を逆手に取り、無地のトレーシングペーパーやケント紙などを全体を映り込ませることで解決できます。ただしA3サイズ程度の大きさでは全体を映り込ませることはできません。1m以上ロール状の用紙が必要となります。

プラ製パッケージの場合も似たような対処法で、ライティングさえ気をつければ猥雑な光の反射を抑えられます。

詳しくは「物撮りテクニック その⑦ プラスチック製パッケージのブツ撮り」をご覧ください。

ブツ撮りであると便利な三種の神器

三種の神器と言いましても大層な物ではありません。

  1. パーマセルテープ
  2. 水準器
  3. 釣り糸

パーマセルテープは被写体のホコリを取ったり、位置合わせにしたり、被写体が動かないように仮固定したり、ズームリングを固定したり、と用途は無限大。できれば黒と白、両方持っていてほしいアイテムです。

水準器は俯瞰撮影時のセッティングでは必須アイテムです。また通常のブツ撮りにおいても、水平垂直は非常に重要です。後々の画像編集でも水平がきっちり出ていると、歪みの補正などの作業が楽になります。

釣り糸(テグス)は商品を吊るのはもちろん、洋服のハンガー撮影の時に袖を持ち上げたり、シューズを吊って動きを出すことも可能です。テグスは細く丈夫で、透明ですから、被写体の邪魔になりにくく、画像編集で消すのも簡単です。

この辺りのアイテムをもっと詳しく知りたい方は「物撮りテクニック その⑧ 俯瞰撮影」をご覧ください。

ブツ撮りにもLightroom・Photoshopが必須

被写体に付着したホコリは完璧に除去することはできません。また偽色やフリンジも完全になくすことはできないでしょう。歪みを補正したい場合にもLightroomはあなたをカバーしてくれるはずです。

被写体だけを切り取りたい場合や、合成したい場合はPhotoshopが必須と言えるでしょう。

少し詳しく知りたい方は「物撮りテクニック その⑨商品の切り抜き」をご覧ください。

三脚が10000000%必要

このシリーズを10回も続けてきたのも、この見出しを書きたかっただけかもしれません。壮大な前振りとなりましたが、ブツ撮りには三脚が10000000%必要なんです。

なぜならライティングは数cmズレれば、効果は大きく変わりますし、魅力的な構図を狙ってmm単位で作っていく必要があります。長時間露光が必要な場合もありますし、アシスタントがいない現場では、三脚がないと被写体のセッティングのたびに、いちいちカメラが邪魔になります。三脚がないと完璧なブツ撮りなど到底不可能と言えるでしょう。以上の理由からブツ撮りでは三脚は必須であり、またしっかりしたブレに強い品質の良い三脚を選ぶことが大切です。

そしてブツ撮りにおいて雲台も三脚と同じくらい重要です。mm単位の微調整が可能なのは、ギア雲台(もしくは微動雲台)しかありません

他にもギア付きセンターポール、サイドアームなどがあると非常に便利です。

三脚・雲台については当ブログで過去にたくさん書いてきましたので、ぜひ色々調べてあなたにピッタリの一本を探してみてください。

三脚を調べる 雲台を調べる

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さて3月に入ってからずっと書き続けてきた「ブツ撮り編」は如何でしたでしょうか?この記事が皆さまのブツ撮りの一助となりましたら幸いです。長々とお付き合いいただき、ありがとうございました!

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haku
こんにちは三脚フォトグラファー「ハク」です。 当ブログのキャッチフレーズは「探していた三脚と雲台の情報がきっと見つかる!三脚雲台沼ブログ」です。 当ブログを読めば大抵の三脚雲台の悩みは解決できるようになるはずです。 どうぞよろしくお願いいたします!
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