6/1はねじの日。ついに禁断のアルカスイス純正ネジについて語ろうと思う

本日、6月1日は「ねじの日」だそうです。

なにやら「ねじ商工連盟」なる組織が1975年7月に制定したもので、6月1日にJISにねじ製品類が指定されたことに因んでのことです。

そこで当ブログでは、ねじの日を記念して、禁断の「アルカスイス純正ネジ」について語りたいと思います。

※当ブログではアルカスイス純正ねじの取り外しを推奨しておりません。また純正ねじを取り外すことによりメーカーのサポートを受けられなくなる可能性があります。

ねじの取り外し行為によって発生する如何なる不具合に対して当ブログでは一切の責任を負いかねますので充分にご注意ください。

またこの記事はアルカスイス製品を取り扱う各メーカーにとって、非常にセンシティブな内容を含んでいる可能性があるため、いつか非公開にするかもしれません。

アルカスイス純正ねじの仕様

アルカスイス雲台にクランプ固定で使用されているのはM6並目ねじです。M6並目ねじというのは、ねじの呼び(太さの直径)が約6mmのねじのことです。ねじのピッチは1mmです。

ピッチというのは隣り合ったねじ山の中心同士を結んだ距離のことで、ミリ単位で表します。並目より間隔の狭い物は細目・極細目と呼びます。細目は微調整を必要とする場合に採用されます。

一般的には雲台とクランプの固定のように強度を重視したい場合は並目ネジが採用されます。

アルカスイス純正ねじの素材はステンレス。長さは全長15mm〜25mmまで複数種類あり、ほとんどが半ネジというのがアルカスイス純正ねじの特徴と言えます。

半ネジとはネジの先端部分から途中までしかネジが切られていないものです。

半ねじを採用する事でねじとクランプのクリアランスを最小限に抑えています。

アルカスイス純正ねじの六角穴はやや花形の形状をしていますが3mm(古い製品は9/64”)です。

たまにネット掲示板などではヘックスローブ(6つの耳たぶという意味:通称トルクス)のT15だと指摘されている事もありますが、それは誤りです。3mmの六角穴であることはケンコートキナーの中の人を通じてKPIに確認していただいたので間違いありません。

ちなみに一般的なM6六角穴付き皿ねじは4mmか5/32″の六角穴が使われます。アルカスイス製品の特殊さが垣間見えるようですね。

取り外しを困難にするねじロック剤

アルカスイス製品のクランプの固定には、ほぼ全てねじロック剤が使用されています。

ねじロック剤とは一般的に「嫌気性接着剤」と呼ばれているもので、空気が遮断されることにより接着力が発生する特性から、密着したねじ面同士を接着します。銘柄としては、ロックタイト(LOCTITE)が有名ですね。

「中強度」「高強度」など固定力が異なるラインナップがあり、また開封された直後がもっとも固定力が強く、開封後は時間経過とともに接着力が劣化します。また塗布する量や位置などによっても接着の強度は異なります。

アルカスイス製品はどの種類のねじロック剤を使用しているか、どの程度の量が塗布されているか、などは一切公表されていません。当然ですが外見からはねじにどの程度のねじロック剤が掛かっているか判断する方法はありません。

一番重要なこと、それはねじロック剤の外し方

高強度ねじロック剤には取り外し方があります。

まず数十秒〜数分間、バーナー・トーチなどで局所加熱し、ねじを250℃まで加熱します。加熱する事で、ねじロック剤に含まれる熱硬化性樹脂が軟化します。加熱により軟化したら六角レンチなどを使ってねじを緩めることができます。

私が加熱に用いている器具はDREMELのガス式のはんだごてです。アタッチメントを取り替えれば小型バーナーとして使えるので狭い範囲を炙ることができます。

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しかしどう頑張ってもねじだけを加熱することはできません。クランプや雲台も多少加熱されます。

Z1+の純正クランプには水準器が搭載されていますし、ボールの受けも樹脂製です。あまり高温になると変形してしまう可能性がありますので、加熱中はクランプや雲台本体が熱くなりすぎていないかチェックしながら作業してください。

加熱時間に関してはハッキリ書く事ができません。なぜなら炎というのは位置によって温度が大きく変化するからです。もし参考までに知りたいという方はお問い合わせフォームよりご質問ください。

お問い合わせフォーム

ネジロック剤は「加熱される事で効力(接着力)を失う」と聞いていて、そう伝えてきたのですが、今回この記事を書くにあたってヘンケルジャパンに問い合わせをしたところ、どうやら加熱されている間のみ軟化し、温度が下がると硬化するそうです。今まで間違ったことを教えてきてしまいました。申し訳ございません!

正しくは十分に加熱後、およそ数分以内に取り外しを行う必要があります

※ヘンケルジャパン様よりいただいた高強度ロックタイト 2620の高温時強度のデータ

二番目に重要なのは取り外す工具(六角ビット)

私が推奨する取り外す工具、ひとつ目は六角ビット(ヘックスビット)です。

六角レンチは持ち手部分が細く短いので、固着したねじや接着されたねじを外すには、少々頼りないですが、六角ビットであれば、ラチェットハンドルやブレーカーバー(スピンナハンドル)を利用できるので、高トルクでネジを外すことができます。

ただし六角ビットであれば何でも良いという訳ではありません。メーカーによってアルカスイス純正ねじと非常に相性が悪いものがありますので注意が必要です。

おすすめのビット①Wera(ヴェラ) 840/1Z ビット 3.0 056315
ヘックスプラスと呼ばれるビットは、工具とネジの接触面積が広く、ネジへの攻撃性が低い事が特徴です。過去にARCA-SWISS純正ねじにビットを装着して、ビットが折れるまでトルクをかけ続けた事がありますが、最後までねじも工具も舐めませんでした。信頼できるビットのひとつです。

Weraのヘックスプラスのビットを上から見たところ。アルカスイス純正六角穴の形状に酷似しています。スタジオJinが勧める工具です。

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おすすめのビット②PBスイスツールズ 1/4 HEXヘキサゴンビット C6-210-3 448-3987
3年以上愛用しています。これまでで一番アルカスイス純正ねじを外してくれたビットでもあります。

玉虫色の非常に美しいビットです。ヨドバシカメラがもっとも安く購入できると思います。https://www.yodobashi.com/product/100000001003519248/

この二本で失敗もなく長らく運用してきたのですが、つい先日気になることを発見しました。どうやら徐々にアルカスイス純正ねじが舐め始めているようなのです。

計測してみたところ、新品の純正ねじと比べると、何度も脱着を繰り返した純正ねじは、明らかに六角穴が広がっていたのです。つまり、WeraやPB SWISS TOOLSのビットを使っていても六角穴は舐めてしまうということです。

そこで今度はねじを保護してくれるというMAC Toolsのアドバンスドヘックスビットを試してみました。いやーまじで驚きました。動画に撮ったのでご興味がある方はぜひご覧ください。

ご覧の通り、軽く六角穴に押し込んだだけで刺さって抜けなくなります。ノギスで計測するともっとも広い部分でぴったり3mmとなっており、かなりギリギリの寸法で作られていることが分かります。

98%までダメージを受けた六角穴が回せるという風車のような形状は、一見六角穴にダメージを与えてしまいそうですが、バンセールスの方曰く、通常使用でまったく問題なく、むしろダメージを軽減できるので普段使い用として積極的に使ってください。とのことですので、人柱的な意味で当分はこちらのみを使って、六角穴の状態を観察していきたいと考えています。

さてビットが決まったので、次はビットソケット。おすすめはSnap-onのマグネット付きビットソケットFBSM8Aなんですが価格が高いので、KTC のBT3-03SSのソケットをお勧めします。実はこれ、ビット付きソケットなんですがビットの交換が可能なんです。つまり自分の気に入ったビットに差し替えて使えるということです。

KTCのBT3-03SSは止めネジでビットを固定できるので、普通のビットソケットよりもガタが少ないのがおすすめするポイントです。もちろんそこまでこだわらなくても、普通のビットソケットでもまったく問題ありません。

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ビットとソケットが決まったところでいよいよ最後の工具、それらを差し込むハンドルです。

ハンドルに関しては長さが15〜20cm程度の物がもっともおすすめです。聞いたことがないようなメーカーじゃないなら、安価なもので良いと思います。要は六角レンチよりはしっかりと握り込めて、トルクを掛けられれば良い訳です。

ちなみに私は30cmくらいのブレーカーバー(スピンナハンドル)を使っていますが、30cmともなるとM6ねじを外すには長すぎる(トルクが掛かりすぎる)ので、力加減を誤ると、あっという間にビットが折れてしまいます。ですので力加減が苦手という方には絶対におすすめしません。

個人的にはラチェットハンドルが良い選択肢ではないかなと思います。ブレーカーバーよりも小型のものが豊富ですし、価格も2〜3000円から安心して使えるものが沢山あります。

特にお勧めするのはko-kenの新型72ギアの178mm。私はショートを使っていますが、本当に良くできていると思います。ただし旧型36ギアと型番が一緒なのでネットショップの場合は、必ず事前に新型かどうか問い合わせをしてから購入しましょう

 

ねじの回し方

一般的にねじは右方向に回すと締まり、左方向に回すと緩みます。アルカスイス雲台も同様に左方向に回すとネジを緩める事ができます

また一般的にねじを外す際に工具を押す力7に対して、回す力を3と言われていますが、固着したねじや接着されたねじの場合は、押す力を8回す力2とするよう心がけましょう。

負けられない戦い!実証実験

能書きを垂れるよりも実際にやってみた方が説得力がありますよね。

そんな訳で私の愛するアルカスイス雲台C1 Cube GPに実際に高強度ロックタイトを使って純正クランプをネジ止めしてみました。

やらせなし。ステマなし。失敗したら私が泣くだけの自虐的な企画となっております

ねじロック剤の候補は2種類。別の機材で試したところ、固定力はほぼ一緒でしたので、今回は徒歩5分のホームセンターで購入できるガチネジ高強度を採用したいと思います。

塗布した量は1.5山分で、放置時間は24時間予定です。少し弱気になっている実際の映像はこちらです。

映像では24時間後に外す。と言っていますが、翌朝用事ができてしまったので結局31時間放置しました。さて結果や如何に!?

結果

結果も動画をご覧ください。

結果は問題なく取り外しできました。

取り外した後のねじに付着したねじロック剤の量や、実際の掛かり具合から推察しますと、アルカスイス社はクランプのネジ止めに同程度のねじロック剤を使っているものと思われます。

塗布される量やねじの長さによって、多少困難度が変わりますが、しっかり熱を入れれば殆どは取り外せるのではないかと思います。

何度も繰り返しますが大事なのは、ねじロック剤の掛かりがどうであろうと必ず熱することです。面倒だからとここを省いてしまうと、失敗する確率が飛躍的に高まりますので必ず守ってください。

取り外しに使用した工具はこちらです。

KTCネプロス 9.5sq.革柄ラチェットハンドルNTBR390KW20。MAC Tools アドバンスドヘックスビット3mm。KTC BT3-03SS ソケット部分のみ。Snap-on  3/8 ブレーカーバー FHBB12A。DREMEL ドレメル バーサティップ 2000。

まとめ

さて、今回はねじの日ということで、これまで触れてこなかったARCA-SWISS純正ねじについて書きました。正直なところ「教わった通りにやったのに失敗した!」といったクレームが過去に何度かあったので記事を削除したり、書かないようにしてきました。それにきっとKPIは代理店として改造行為を行ってほしくないと思っているはずです。

しかしアルカスイス純正クランプの使いにくさに嫌気がさして、クランプ交換を夢見て失敗…。泣く人が後を絶たない状況を見て、今回書くことを決意しました。

だからと言って純正ねじを外すことを推奨するわけではありません。私は誤操作によって機材の転落が起こりうるP0 HybridのみReallyRightStuffのクランプに換装していますが、それ以外のアルカスイス雲台は純正クランプを使っています。デザインも一番格好いいと思います。

取り外す前に今一度冷静になって、本当にそのカスタムが必要か考えてください。あと最後に

くれぐれも自己責任でお願いします!

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haku
こんにちは三脚フォトグラファー「ハク」です。 当ブログのキャッチフレーズは「探していた三脚と雲台の情報がきっと見つかる!三脚雲台沼ブログ」です。 当ブログを読めば大抵の三脚雲台の悩みは解決できるようになるはずです。 どうぞよろしくお願いいたします!
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