目新しい製品の発表がなく、やや停滞気味だった三脚業界に激震が走ったのは昨年5月。突然kickstarterでPeakDesign(ピークデザイン)のトラベル三脚が発表されて大きな話題となりました。
その三脚が遂に私の手元にも届きましたので、早速ファーストインプレッションしたいと思います。とは言っても実際に外に持ち出して使った訳ではないので、本当に第一印象だけです。
スペック
まずは公式発表のスペックから見ていきましょう。
Categories | Numerical data |
耐荷重 | 9.1kg |
縮長 | 38.7cm |
最大直径 | 8.3cm |
高さ(センターポールを伸ばしたとき) | 152.4cm |
高さ(センターポールを下げているとき) | 130.2cm |
最低高 | 14cm |
本体質量 | 1.27kg |
ロック方式 | レバー式ロック |
段数 | 5段 |
雲台 | 自由雲台 |
クイックシュー規格 | PeakDesign規格(アルカスイス互換) |
海外価格 | $599.95 |
国内価格 | 未定 |
付属品 | ソフトケース/スタンダードプレート/六角レンチ |
製品の特徴
スペックだけ見るとフルサイズの一眼レフカメラ&望遠レンズに対応できるトラベル三脚です。ごく一般的なトラベル三脚の中でもかなりコンパクトで、脚の直径よりも出っ張ったパーツがないので、カメラバッグにすっきりと収納できるスリムな三脚に仕上がっています。雲台込みで1.27kgと超軽量で、荷物の多い旅行にも携行しやすい本格的トラベル三脚と言えるでしょう。
外観
デザインは結構格好良いですね。マンネリ化した三脚のデザインが多い中で、これだけオリジナリティを出してきたのは評価したいと思います。
使用感・気づいた点(三脚部)
足の伸縮にかなりムラがあります。レバーロックを解除して脚を下に向けるとスルスルと自重で下りる脚もあれば、手で伸ばすのも固くて引っかかる脚もあります。上の段が伸びていない時に下の段を伸ばすと、内部の空気抵抗で固くなる時があります。しかし明らかに引っかかりを感じる脚があります。
問題の脚を分解してみたところ、この樹脂パーツにバリが残っていました。そこを少し削ってやると、スムーズに伸縮するようになりました。
ただしこういった行為は「メンテナンスや調整の範囲」を超えているかもしれません。最悪の場合、保証を受けられなくなる可能性があるので、伸縮にお悩みの方はピークデザインのサポートに問い合わせる方が良いと思います。三脚の裏側にあるQRコードから辿っていけば問い合わせる事ができます。
レバーロックは、やや長めの樹脂製です。この樹脂の耐久性は長く使ってみないと何とも言えません。組み立てが適当なのか、締める時にメキメキと音が鳴るような異様に固いレバーもありました。レバーの固さは付属のレンチで調整可能ですので、そのような場合は調整しておいた方がいいと思います。
分解は簡単とは言えませんが、一応可能です。レバーロックなのにメンテナンスできるのは良いですね。素晴らしいと思います。
三脚を最大まで伸ばすと連結部(レバーロック部分)に若干のガタつきを感じます。脚は一見太く感じますが、平たく厚みが薄い形状ですから、上からの荷重に対しては、丸型パイプに比べて強くないように感じます。特に一番下の脚がかなり細いので、太い脚から伸ばして使うように心がけないといけません。上から三脚を捻ってみれば分かりますが、たわみもかなりあります。風が強い環境では使いたくないな、というのが正直なところです。
段ロックセレクターの操作性は可もなく不可もなく、他社メーカーと比較して劣りも勝りもありません。ただ全開脚と通常開脚の2段階しかないのは残念。もう1段階あれば、段差がある所で立てるのに便利だったと思います。
途中でカーボン三脚のセンターポールが、カーボン製からアルミ製に変更になりました。この事に対して詳しい説明のページがありました。その説明によると、ユーザーテスト及びPeakDesign社テストにおいて、カーボン製よりもアルミ製の方が性能が良いという結果が出たそうです。あらゆる面においてメリットの方が大きかったため、仕様変更となった、とのことです。
センターポールをショートポールに変更できます。変更するためには雲台の側面からボルトにアクセスし、脱着する必要があります。ボルトは付属のレンチで脱着できます。
石突は底からボルトで固定されています。おそらくステンレス製で錆びにくい素材なんだとは思いますが、ステンレスも錆びないわけではありません。特に海水などで濡れてしまうような環境では錆びや劣化が心配です。この場合、保証の対象になるのでしょうか?ちなみにこの石突はメンテナンスで取り外し可能ですが、緩み止めのロックタイトが掛かっています。取り外す時はネジを舐めないように注意して作業してください。
下のyoutubeの動画で見たのですが、岩など固いものにぶつかると、カーボンが剥がれるようです。どうやらカーボン柄はプリントのようですね…。
使用感・気づいた点(雲台部)
雲台のロックはリング式。このロック方式はアルカスイスP0やGitzoのシステマティック雲台で使われてきたものに似ています。フリクションコントロール機能が付いていませんが、一番緩めてもスカスカということはありません。ただしボールの操作性はお世辞にも滑らかと言えません。
また雲台を使うためにはセンターポールを伸ばす必要があります。特にキャプチャープレートを使う場合、縦位置にセッティングするには最低でも4〜5cmは伸ばす必要があります。通常の自由雲台のステムと比較するとちょっと長いですから、その分、通常の自由雲台よりブレに弱いと思います。
縦位置での最大の欠点は角度に制限があること。3箇所出っ張りがあるので、その出っ張りの部分はセンターポールに干渉してしまいますので反対側に傾ける必要があります。

雲台側に3本の支柱があるので、角度に制限がある。
クランプ部のピンが邪魔ですが、取り外すことができます。クランプのプレート台はManfrottoのロゴマークに似たデザインで、細かい溝が彫られています。
クランプのロック構造はよくできています。この機構に興味が湧いて買ったと言っても過言ではありません。またスライドロックレバーを緩めただけでは外れないというのも安全性が高いです。センターマークが刻印されているのもGOOD。
パンは単独で操作できません。多少大きくなってもクランプ部の下に付けておけば、縦位置角度問題を回避できたのに…と悔やまれます。次回は搭載してほしいですね。
この雲台をレベリングベースとして使って、小型軽量のビデオ雲台やジンバル雲台を装着する、という使い方が出来るのではないかと期待していました。しかしそもそもこの三脚は重い機材を載せるには頼りないので、ビデオ雲台やジンバル雲台を載せるにはちょっと厳しそうです。
使用感・気づいた点(付属品)
六角レンチが付属しているのですが、これがすごく遊び心があるレンチです。
このように三脚に装着できるようになっているのが最高。常に携帯しておけるというのは機能的です。
2.5mmと4mmのふたつの六角レンチで構成されており、このレンチひとつで三脚に使われているほぼ全てのネジにアクセスできます。アメリカメーカーなのにインチ規格ではなくミリ規格を採用しているのが興味深いですね。レンチ自体の精度は一流工具と比較すると、そこまで高くありません。通常時のメンテナンスはweraなど精度の良い工具を使われることをお勧めします。
かつてGitzoにもこのようなアクセサリーがあったのですが、ぜひ復活してほしいですね。
スマホホルダーがセンターポールに内蔵されています。
RRSにも工具を内蔵するものがありましたが、スマホホルダーを内蔵するという発想が面白いですね。ホルダー自体はバネ式なので若干頼りない作りです。iPhone11で試したところ問題なく装着できました。
三脚ケースはぴったりに作られているので雲台を交換した場合はケースに入らなくなります。もう少し余裕があっても良かったかなと思います。が、このケースはまぁまぁ好きです。
メンテナンス(脚の分解)
脚の分解清掃も可能です。こちらも付属の工具で各パーツを取り外せます。最初に石突を4mmのレンチで外しておきます。
まず一番太い脚のレバーは手で簡単に外せます。これで2段目以降の脚が取り外し可能となります。以降のレバーは、穴に付属の工具(三脚ケースの内ポケットに入っています)を当ててグッと挟む込むことでレバーロックを外すことが出来ます。
通常のロックナットに比べると分解は大変です。レバーという構造上仕方がないのかもしれませんが、面倒くさいというのが本音です。
互換性
アルカスイス互換であることは間違いありません。ただ相性問題があります。
このようにマーキンスのプレート(PV-80)を装着すると、浮いてしまいます。なぜか調べてみると、なるほど原因が見えてきました。ピークデザインの雲台のクランプ部分は、可動部の爪の方だけ少し高くなっています。
そして今度はプレート側。KIRKのLプレートと違ってマーキンスのPV-80は明らかにダブテールプレートの厚みが薄いことが分かりました。
KIRKを装着すると問題は起こりません。が…
マーキンスのPV-80の場合は、片方のクランプの爪にプレートの底が干渉してしまい、結果浮いてしまいます。
このようにメーカーやモデルによって、この問題が起こる可能性があります。この問題により滑落などの事故に繋がるとは思えませんが、クランプやプレートを傷付けてしまう可能性はあります。
そのようなトラブルを回避するためにも、互換品を使う場合は、ダブテールプレートの厚みが薄いプレートは避け、なるべく厚みのある物を選んで使うように心がけてください。
メンテナンス(公式発表)
どの程度まで保証してくれるかは分かりませんが、無期限の保証つきということです。詳しくは問い合わせてみてください。
<PeakDesign問い合わせ先URL>
https://support.peakdesign.com/hc/en-us/requests/new
不満点
一番気になったのは脚の伸縮具合にバラツキがあるということです。正直、検品で引っかかっても良いのでは?という固さの脚もあります。かと思えば緩々で勢い良くストーンッと落ちる脚もあります。ここは凄く不満…。
あと剛性は優れているとは思えません。トラベル三脚であることを加味しても、ちょっと弱いのではないか?と思います(比較する製品自体が少ないという事もあります)。ただ一番細い脚の平たい部分の直径が実測で9.3mmしかないので、期待のし過ぎは酷かもしれません。
まとめ
さて、とりあえず第一印象としての記事はこの辺で終わりたいと思います。今超話題のピークデザインのトラベルカーボン三脚のご紹介でした。
普段あまり三脚を使わないユーザーで、たまの利用や旅行に限定するのであれば、デザインも格好良いですし、軽量コンパクトなので、購入しても良いのではないでしょうか?ピークデザインが好き!っていう人も所有満足度が高いと思います。
そこそこ大型の機材で、毎回撮影の度に三脚を持ち出して、夜景や星系、長秒露光などの本格的な三脚撮影を行うという方には、少し物足りないスペックかもしれません。
動画


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