ARCA-SWISS P0 Hybridは素晴らしい雲台です。しかし一点、大きな不満点があります。
最高の雲台 ARCA-SWISS P0 Hybrid 最大の不満点
P0 Hybridの純正クランプ(classic)の固定ノブとギアを駆動するための微動ノブと大きさや形が酷似しており、そしてそれらが近接していることが最大の不満点です。
下の画像を見てもらえれば伝わると思いますが、めちゃくちゃ紛らわしくて間違えやすいんです!
そしてこのふたつの酷似したノブ、「うっかり間違っちった〜」などと簡単に間違って良いノブではありません。
間違って操作してしまうと、大切な機材の落下事故につながる可能性があります。
実際私も、落下にこそ至りませんでしたが、うっかりクランプノブを緩めてしまったことが2度3度ありました。
毎回「どっちが微動ノブだっけ?」と確認しながら操作しなきゃいけない雲台なんて、面倒臭くて仕方がありません。
こういった経験から、操作ミスが起こりにくいフリップロック(レバータイプの純正クランプ)に変えてみたのですが、このクランプがどうにも使いにくい…。

ARCA-SWISSフリップロッククランプは2段階のロック解除を行なってクランプを脱着する必要があります。また装着するプレートのサイズが少しでも違うと、いちいち爪幅の調整をしなくてはいけません。 デザインは格好良いのでしばらく使っていましたが、あまりにも使いにくいため現在は使用していません。
純正クランプでは解決方法が見つからないため、アルカスイス製品とのデザインの相性が良く、また扱いやすいReallyRightStuff社のレバークランプに交換する決断に至ったわけです。
換装に関する問題点
しかし、ARCA-SWISS純正クランプを外して、そのままReallyRightStuff社のクランプを交換できるのか?と言えばそう簡単な話ではありません。
まず保証が受けられなくなる可能性が高くなります。改造行為ですから仕方がないですね。
また純正クランプは簡単に緩んでしまわないように、ネジにネジロック剤が施されているうえに、通常この太さのネジには4mmの六角穴が採用されるはずが、アルカスイス純正ネジはなぜか3mmの六角穴が採用されています。
つまり、ネジが接着剤で固定されている上に、通常より1mmも細い工具で取り外す必要がある。そして失敗してネジを壊した場合に保証が受けられない可能性が高い。ということです。
問題点はそれだけではありません。
そもそもクランプと雲台本体の固定方式が異なります。ARCA-SWISS社は3mmの空転防止用ピン2本で本体とクランプを止めているのに対して、ReallyRightStuff社はミゾとホゾの接合方式を採用して空転を防止しています。
つまり何も対処せずに交換してしまうと、雲台本体とクランプの間にズレが生じてしまう可能性が高まります。
この問題の解決策
この問題の解決策はふたつあり、ひとつ目はReallyRightStuffクランプの裏側に、ARCA-SWISSクランプとまったく同じ位置にΦ3ピン穴を空けてしまうこと。この穴に3mmのピンを埋め込んで、雲台のピン穴に差し込んでネジ止めすれば換装可能です。

※こちらの画像は旧モデルです。

※新マウントのロゼットマウントの裏側。今購入される方はこちらになっていると思います。
二つ目は本体とクランプの間にふたつを繋ぐための別パーツ(以後スペーサー)を作ってしまうこと。
今回は二つ目の解決策である「スペーサー」を作ってクランプ交換することにしました。
換装
さて今回のカスタムに使用するクランプはReally Right Stuffの60mmレバークランプ「B2-LR II」です。
数あるReallyRightStuffのクランプの中で、スペーサー式の換装に使えるレバー式クランプはこのモデルだけです。
ちなみにこれまでもワンオフでこのスペーサーを自作してB2-LR IIに交換してきました。
しかし上の画像を見ていただければ分かると思いますが、何とな〜く「純正じゃない感」が拭い切れませんでした。
常々もう少し完成度を高めたいと考えていたので、今回久しぶりにSmallRigの「オーダーメイドサービス」に依頼して作ることにしました。
SmallRigのオーダーメイドサービス、以前との変更点
しかし長らくオーダーメイドサービスを利用しない間に、事情が変わったようです。
以前のオーダーメイドサービスと現在で異なる点は「担当者が変わり、日本語が通じなくなった」ということです。これは我々日本人にとってかなり痛い変更点ですね。
そのため、基本的に3Dデータを作れる方のみ募集している状況です。
3Dデータを作れない方は、まずは作ってもらえるかどうか交渉からスタートとなります。そしてそのやり取りはすべて英語か中国語となるため、その点もネックです。
以前はオーダーメイドを「注文する」という工程はありませんでしたが、現在は1ドルのオーダーメイドと送料10ドルをカートに入れて、1ドルOFFと10ドルOFFのクーポンコードを入力して、注文しなければいけません。
どうやらオーダーメイドの製品管理と配送に必要な情報のようです。
しかし、なぜか同じ注文を何度もするよう求められたり、注文後に別の部署から「どのような注文ですか?」と問い合わせが来るなど、いまいち上手く機能していません。。
昔のスムーズだった頃のサービスを知る人にとっては、かなりストレスを感じるかもしれません。
ついに完成!!完成度や如何に⁉️
根気強く細かいニュアンスや要望を伝えて、ようやく完成した製品がこちらです。
それではいよいよ換装というところでトラブル発生。
皿もみの深さが足りなかったみたいで、皿ネジの頭が少し飛び出てしまいました…。
気を取り直して、また拙い英語のやり取りで修正依頼。こういった場合は過去では有料でしたので今回も覚悟していましたが、なんともう一度無料でサービスを受けれるとのこと!本当にありがとうございます!(修正の依頼内容や、依頼している物の原価などにより、受けられる無料サービスの回数が異なる可能性があります)
そんな訳でまたもや待つこと数週間。今度こそ上手くいきますように…。
良い感じに仕上がりました。
裏側の中央穴を見ていただくと分かると思いますが、かなりギリギリまで深くもんでもらいました。
薄い部分が出来るのですから当然前の設計より強度は劣りますが、底は雲台本体と密着する場所ですので、特に問題にはならないと思います。
改良をお願いした訳では無いのですが、レーザー刻印がとても濃く綺麗になっています。嬉しいですね。
さぁ今度こそ換装です。
いやもうこれ最高じゃないでしょうか?
最後に
今回は皿もみの設計ミスもありかなり時間を要してしまいましたが、結果的には大成功でした。
現在のオーダーメイドサービスは、以前と違って越えなければならないハードルが高く、気軽にお勧めはできない状況ではあるものの、それでも一般人にとって無料で高い完成度の製品を形にできる唯一無二のサービスと言えるでしょう。
情熱を持って製品作りにチャレンジしてみたい方は下記メールアドレスまでお問合せください!
SmallRigのオーダーメイドサービスの問い合わせ先
メール:dreamrig@smallrig.com
担当者:Jennifer / 言語:英語
また今回製作したARCA-SWISS⇆ReallyRightStuff換装用スペーサー(SmallRig内での型番はDR-00937)を10個だけ有料で特別オーダー予定です!
しかし世界的なアルミの価格高騰、急激な円安、そして何より少量生産のため、今回は私も引くほど価格が高かったです。
ただP0 Hybridの運用に不安を感じている方にとっては価値あるカスタムだと思います。


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