アルカスイスの純正クランプは非常に格好良いデザインのクランプですが、他メーカーのクランプと比較すると非常に個性的というか「クセの強いクランプ」です。
今回はそんな格好良くも気難しい純正クランプを、カスタムして長く付き合っていくための秘訣をご紹介したいと思います。
アルカスイス純正クランプは実は完成された素晴らしい製品
アルカスイス純正クランプは、アルカスイスユーザーにとってインダストリアルデザインとして完成された完璧な製品です。なぜなら1つのクランプに新旧プレートどちらのプレートにも互換性を持たせ、尚且つデザインとして美しいからです。
さぞ古くからARCA-SWISSのビューカメラを使ってきた方にとっては最高なクランプでしょう。
しかし私を含むアルカスイス雲台を所有している多くは「アルカスイス互換」ユーザーなのです。その多くはfixなんて規格のプレートは持ってないし、ビューカメラなんて見たことも無いって人がほとんどでしょう。
つまり純正クランプの下段のfixのアリミゾは不要、というか邪魔に感じているのです。
fixのアリミゾを塞いで快適に
溝が邪魔なら塞げば良いと思いついたのが、今からもう10年前の2014年。最初はアルミ板を加工してプレートを自作しました。
しかし当時の私の作業環境ではクランプの丸い形状がアルミ板では綺麗に出せなかったため、見た目がイマイチでした。
そこで次は加工が容易なゴムシートで再チャレンジしました。ホームセンターで1枚60円くらいだったと思います。それをクランプの形状に合わせて切り取りました。
アルミ板の時よりも見栄えは良くなりました。しかしこのゴムシート、ほんの少しだけ、と言っても0.7mmくらいなんですがプレートの面よりも低かったのです。
この段差がモヤモヤしてしまい、さらに完璧を求めてパテで自作することにしました。
使用したのはセメダインの穴うめ・成形用のエポキシパテ「HC-117」。
※画像はメーカー商品ページより
商品ページ:セメダイン 穴うめ・成形 エポキシパテ プラ用 45g HC-117
制作に1日半かかってしまいましたが、段差の無いシートが完成しました。完全に乾燥するとカチカチの樹脂になります。
真ん中を一部切り抜いた理由は、幅調整のネジを操作できるようにした事と、シートを付けたままクランプの脱着を可能にするためです。
塗装は染めQブラック。染めQはお値段が少し高いですが、塗装が苦手な人でも簡単に染めやすく、また薄いので今回のように0.数ミリの皮膜が仕上がりに影響するような物の塗装にお勧めです。
商品ページ:染めQテクノロジィ 染めQエアゾール ブラック 264ML
この自作シートは2年前に作ったのですが、とても気に入っていて今も使っています。ただ制作に労力がかかるため、もうひとつ作ろうという気力が湧かないのが欠点です。
ARCA-SWISS フリップロックが抱える問題点と解決策
ARCA-SWISS社のレバー式の純正クランプ「フリップロック」は2段階のロック機構がついています。安全性が高いという意見もありますが「操作が煩わしい」という声の方が大きいのが実情です。
私がフリップロックの使用を過去に断念したのは、このロックが原因でした。
それでは足早に解決へと参ります。まずは分解します。
レバーを解除して上のようにクランプを押せば中央のネジが軽々と回るようになります。
このネジを回し続けると分解できます。
この時、しっかり抑えながら分解しないと内部のバネの力でパーツが方々に散らばってしまうのでご注意ください。
今回カスタムするのはレバーだけです。
使う工具は2mmのポンチとハンマー。
レバーの裏側(ピンの近くにARCA-SWISSのロゴがある方) からピンにポンチ(先が2mmのもの)を当ててハンマーで叩くと、ピンが抜けます。
上のように3つのパーツに分解できます。カスタムするのは赤丸で囲ったパーツで、天頂部分をヤスリで削り取ります。
この時、天頂部分の段差をわずかだけ(0.5mmくらい)残します。
使った工具はツボサンのブライト900。
商品ページ:ツボサン ブライト900
あらかた削り落としたら400番からペーパーをかけて、少しずつ細かく当てていき2000番あたりで仕上げます。
では早速クランプを元通りに組み戻して、操作してみましょう!
結果わたしの目論見通り、レバーのロックボタンで2段階目のロック解除ができるようになりました。0.5mmほどのわずかな段差を残したおかげで、1段階目の90度ロックもしっかり掛かります。1段階目のロックボタンを引き続ければレバーが閉まった状態から、一気に180度全開放も可能です。
ただし、この改造によりメーカーのサポートが受けられなくなる可能性もありますので、お勧めしにくいカスタムと言えます。もし挑戦されるというかたは、くれぐれも自己責任でお願いします。
クラシッククランプの幅調整の方法
クラシッククランプのクランプ幅が狭くて、上からプレートを装着できないという相談を受けたことがあります。

※画像はT.O様より
いちいち横からスライドさせないと装着できないのは流石に不便です。この場合の調整方法をご紹介します。
まずはクランプを最後まで締めます。ノブのエンドキャップが現れますので、ヘラなどを使って外します。特にロック機構が付いている訳でないので、簡単に外れます。
中から六角穴付きボルトが現れます。しかし強固にネジロック剤が掛かっていますので、そのままでは回りません。今回はドレメルのバーナーで1分間炙ります。
商品ページ:Dremel(ドレメル) はんだごて

※画像の炎はイメージです
ボルトが熱いうちに4mmの六角レンチで反時計回り方向へ回します。プレートとの脱着を確かめながら、少しずつ回して調整してください。
HAKUお勧め工具:Wera 3950 SPKL Hex-Plus ステンレス六角レンチ 4.0 yellow 022664
まとめ
アルカスイス純正クランプは1段式にしたり、ロック機構をカスタムすれば、他社製品と遜色ないレベルで使いやすくなります。(※使用感には個人差があります)
もし純正クランプを使いたいのに使いにくくて悩んでいる方がいらっしゃれば、ぜひ一度試してみてください。


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