世の中には特定の分野に特化した工具セットがあります。
有名な物だと車載工具セットや時計メンテナンスセットなどです。
ニッチなものではギターメンテナンス工具セットなんてものもあります。
しかし残念ながら『三脚・雲台・プレート』に特化したメンテナンスセットは見当たりません。
もしかして、否、もしかしなくてもニッチ過ぎるのでしょう。
無いものを嘆いても仕方がないので「こうなりゃ自分でセットを作るか?」などと考えていたところに、weraから2023年の新商品として面白い工具セットが発売されました。
その工具セットとは「wera サイクロップポケットセット2」。これをカスタマイズすればオリジナルのセットが組めそうな気がします。
…という訳で早速購入しました。これまでに無い新しいフォルムに心躍ります。ただ円安も相まって実勢価格2万円前後と結構高いのが難点です。
まずは簡単にサイクロップポケットの機能説明をば。
ヘッドは差込角3/8”のソケットと6.35mm六角ビットが使用できるハイブリッド仕様です。いずれもマグネットで保持します。
マグネット式ゆえに、ソケットの保持力は一般的なソケットレンチと比較すると弱いです。奥まった場所での作業ではソケットを置き去りにする可能性が高いので注意が必要です。
スイベルヘッドは角度固定式で0°、15°、90°の3ヶ所で固定できます。固定せずフリーで使えたらもっと便利だったのですが、固定箇所以外ではラチェット機構が噛んでしまうため操作できません。(ロックレバーを押し下げながら無理やり操作することは可能です)
ロータリー式内蔵マガジンにはなんと12本のビットが収納できます!これが欲しかった最大の理由です。
三脚・雲台系の機材はミリメートルとインチ規格の六角穴や、他にもトルクスネジなどが混在しているため、扱うビットがたくさんあります。正直12本でも足りないくらいです。
ロータリー式内蔵マガジンは脱着しやすい。とまでは言えませんが、使い難くもありません。この機構にしては良く頑張ったなという感じです。
ラチェットの使用感も上々で満足度は高いです。
驚いたのがプリントの弱さ。まだ使い始めて1日2日なんですが早くも消えかけています。
しかもハードな使い方は一切していないので、バイク整備などに使用したら1回で綺麗さっぱり消えてしまいそうです。型番は消えてしまうと万が一故障した場合などに問い合わせたり、調べるのが困難になるので、もう少し強いプリントにしてほしいですね。
さて、それではいよいよ三脚メンテナンスキットを作っていきましょう!
いざ三脚メンテナンスツールキットを製作!
製作!と意気込んではみたものの、格好いいweraのホルダーに不可逆の改造はしたくないので、いつでも元の状態に戻せるようなカスタムにしたいと思います。
まずはホルダーと付属工具。ホルダーには幅広の強力面ファスナー(オス)をカットし、6ヶ所パンチ穴を空けて貼り付けます。
その穴を利用して必要なレンチを差し込み固定します。
スペース的にあと1本分は空けられそうです。
とりあえず今回はT10、T25、3/16”Hexの3本。RRS三脚、RRSミニ三脚、Gitzo三脚の開脚部分の固定用のレンチです。Gitzoミニ三脚をお持ちの方はT20が必要です。
サイクロップポケットの内蔵マガジンにももちろんこれらのサイズのビットは入れますが、脚の固定には反対側を押さえないとボルトが共回りしてしまうため工具が2個必要です。
なお、強力面ファスナー(オス)はレンチの表面を傷つけてしまうため、なるべく安価なレンチを選んだほうが精神的ダメージは低いでしょう。(それでもちゃんとした工具メーカーの物を選定しました)
次にベルトループの中にクニペックスのミニプライヤーレンチを収納しました。ただベルトループに挟み込んだだけでは落下してしまいそうなので、ウレタンのクッション剤を隙間に詰めることで落下防止策を講じています。
ハスキー三脚の脚の調整用が目的ですが、ちょっとした作業にも便利だと思います。
次は表側。差込角3/8”のソケットホルダーが3つあります。
ここにホールドするのはクイックスピンナー、ビットソケット、13mm、蝶ネジソケット、T20ビットの5種類。13mmはハスキーの脚の固定用。ハスキーの脚の固定ボルトは微妙に太った1/2”なので、インチ・ミリメートルどちらにも使えるコーケンのサーフェイスソケットをチョイスしました。T20ビットはGitzoミニ三脚用です。
同じくコーケンの蝶ネジソケットは手回し式のカメラネジに使えます。

やや太めのハンドルにシンデレラフィットします。
ビットのエキバー。あれば便利な局面もあるかと思い残しました。
そしてエキバーに装着して収納する形でアネックスのトルクアダプターと5/32”のビット。
トルクアダプターはカメラとクイックシュープレートを適正な力で締め付けられる精密工具です。
アメリカメーカーのプレートの固定ボルトは大抵5/32”の六角穴ですから、これで脱着できます。
最後、ロータリー式内蔵マガジンのビットの入組は以下の12種類です。
ビット規格 | 用途 | |
1 | マイナス刃厚1mm | マイナスカメラネジ、止めネジ |
2 | 2.5mm六角 | 主にアメリカ以外のメーカーのアクセサリー |
3 | 3mm六角 | 主にアメリカ以外のメーカーのアクセサリー |
4 | 4mm六角 | 主にアメリカ以外のメーカーのアクセサリー |
5 | 3/32″六角 | 主にアメリカメーカーのアクセサリー |
6 | 7/64″六角 | 主にアメリカメーカーのアクセサリー |
7 | 1/8″六角 | 主にアメリカメーカーのアクセサリー |
8 | 3/16″六角 | 主にアメリカメーカーのアクセサリー |
9 | 7/32″六角 | 主にアメリカメーカーのアクセサリー |
10 | TX10 | RRSミニ三脚の固定・調整 |
11 | TX20 | Gitzoミニ三脚の固定・調整 |
12 | TX25 | Gitzo三脚の固定・調整 |
使用してみた感想
100%三脚・雲台・プレート用に振り切った入組のため、一般用ドライバーとしては最悪です。
しかし三脚・雲台・プレートをメンテンスしたい場合は、ほぼ工具箱いらず。国内外あらゆるメーカーの機材の調整・分解をこのセットでほぼ対応できました。
いちいち工具箱を漁って目的の工具を探さなくても良いというのは、非常に便利だと思います。
しかもコンパクトながら全ての工具が応急用ではない。という点もポイントが高いです。
一般販売している工具や商品を入れ替えたり追加しただけですので、揃えればどなたでも同じセットを作れますし、使っている機材に合わせて入組をカスタマイズできます。
ここまで読んでくれた方が一体何人いらっしゃるかわかりませんが、もし奇跡的に興味が湧いたよって方がいてくれたら、ぜひオリジナルの三脚メンテナンスセット作りにチャレンジしてみてください!


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