部屋でブツ撮りをしていて考えることはたくさんありますが、まず最初に考えるのはどのレンズを使うか?であります。
ブツ撮りで使うべきレンズ
商品商品というのはイメージカットじゃない場合、その商品の形状や色を忠実に再現することが正しいとされています。そりゃそうです。写真を見て格好良いと思ったから注文したのに、届いたら全然違った…なんて事になったらクレームの元です。
こういった事にならないように、歪みが起こりにくい焦点距離のレンズを使うことがブツ撮りでは正しいとされている理由です。
では歪みが起こりにくい焦点距離とは何mmなのかと言いますと、個人的に勧めているのは90mmくらいです。ざっくり70mm〜120mm(フルサイズ35mm換算)くらいなら問題ありません。商品撮影の指南書には100mmと書かれていることが多いですが、何が何でも100mmにこだわる必要はありません。極端な歪みが出なければ良いので、この範囲内の画角をカバーしたレンズを持っているなら、わざわざ新たにレンズを買う必要はないと思います。
初心者向けのダブルズームキットの望遠レンズで十分で、そんなに高額なレンズである必要もありません。マクロ撮影ができた方が好ましいのは事実ですが、今のカメラは性能が良いので、撮った写真をトリミングすれば良いと思います。
もちろん、良いレンズには良いだけの価値があるのも、また事実です。予算に余裕があるならマクロレンズと、「アオリ撮影」が可能なシフトレンズがあると表現の幅がグッと広まるのでおすすめです。
中望遠は写せる範囲が狭い
しかし90mm前後の中望遠域の画角は、撮影範囲が狭いという問題があります。これは部屋で撮影するブツ撮りにおいてしばしば頭を悩ませます。いざ撮影という段階で「困った!」ということにならないために、被写体を見ただけで自分の撮影スペースで撮影可能かどうか分かるようにしておきましょう。
イメージとしてはこんな感じです。イラストはフリー素材を使わせていただきました。
具体的な数字は出していないので間違っていたら申し訳ないですが、1mで30cm、2mで75cm、3mで120cm、4mで170cmくらいの被写体を撮影できると考えています。これは目一杯画角に入るサイズですから余白を考えると、実際に撮影できるのはもっと小さくなります。
また実際の撮影ではバックからライティングすることも多いですし、三脚だって壁ギリギリに立てられる訳ではありません。現実はもっともっと距離は短くなるので、撮れる被写体の大きさも小さくなると覚えておいてください。
ここで撮影スペースが仮に6畳として、間取りは大きくとも(京間でも)3.8mです。撮影台の位置が端から60cm、三脚の位置が端から15cmにセッティングしたとすると、撮影距離は3mです。つまり最大120cmくらいの大きさの被写体しか撮影することはできないということが分かりますね。
俯瞰撮影も注意が必要
俯瞰撮影でよくある勘違いが(雲台を含む)三脚の高さがイコール地面からの高さではない、ということです。どういう事かと言いますと、真っ正面に向けて撮影するときと違って、俯瞰時は雲台が90度傾いてしまうわけです。
上の図の例で言いますと、実に15cm低い位置から撮影しなければならないという訳です。2mの高さから俯瞰撮影しようと思ったら、(雲台の高さ込みで)2m15cmの高さの三脚が必要という訳です。
そして仮に2mの高さまで上げて俯瞰撮影しても70〜80cmの被写体しか平置きできませんから、90mmの焦点距離のレンズだとワンピース1枚画角に収まらない訳です。(そういう場合は無理に高さを上げようと考えるのではなく、短い焦点距離のレンズを使うことを考えましょう)
ちなみに一般的に洋服を平置き撮影する場合には真俯瞰ではなく、斜めに平置きしたり、待ち針などで吊ってしまうことが多いです。
斜めに置いたり、立て掛ける事により、撮影距離を稼ぐことが出来るからです。

70度に傾けたボードにマチ針でピン止めして吊った状態で撮影。マチ針はPhotoshopで消して、歪みツールでマチ針周辺の形を整えています。
まとめ
レンズの話からかなり逸れてしまいましたが、そろそろまとめたいと思います。
- ブツ撮りするなら90mm前後が良い
- 最初は無理せず70〜120mmくらいをカバーしたズームレンズを使うと良い
- マクロレンズはお金に余裕ができてから。最初はトリミングで十分
- 90mmは意外と撮れる範囲が狭い
- セッティングがあるから部屋は思った以上に狭い
- 俯瞰になるとさらに狭くなる
という感じです。つまり90mmくらいの焦点距離のレンズがブツ撮りに向いているけど、撮影する前には撮影距離(部屋のスペース)を考えながらセッティングしようね、ということですね。これまで書ききれなかったことを書けたのではないかと思います。


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