いざという時の頼りになる相棒である三脚。(特定の方以外は)生涯でそう何本も買う物では無いと思いますので、いつまでも新品時のように快適に使いたいですよね。
今回は三脚を長持ちさせるために是非とも読んでほしい記事となりますので、どうぞ最後までお付き合いください。
三脚を滅多に使わない場合
三脚にとって一番良いのは使うことです。しかし実際には買ったものの滅多に使う機会が無いって人も多いでしょう。
三脚に限った話しではありませんが、使ってないからと言って新品の状態を保てる訳ではありません。
むしろ三脚の場合はグリースが固着したりネジやスパイク部分が錆びてしまったり、長期間放置すればするほど致命的な不具合が生じてしまう可能性があります。
まだ買ってから一度しか使ってないのに、何年か後に使おうと思ったらロックナットが固まっていて脚を伸ばせなかった。という話しを実際に聞いたことがあります。
さてでは長期間使うことができない場合はどうしたら良いのでしょうか?
まず多くの方がやりがちな保管方法が「元箱や付属の三脚ケース(保存袋)に入れて保管する」です。
しかし元箱や三脚ケースは通気性が悪い場合が多く、長期保管に適した環境とは言えません。
また不織布の保存袋を採用しているメーカーも多いですが、気づいたら経年劣化で細かく砕けてしまっている事もあります。
さらに三脚にストラップが付いている製品は、ストラップのゴムや合皮が加水分解でネチャネチャ・ボロボロになってしまい、それらが三脚に付着し汚してしまうこともあります。
三脚を長期保管する場合はできるだけ風通しの良い場所を選び、脱着可能なストラップやゴムグリップは外しておく事が大切です。

私は自作の三脚スタンドに立てて室内保管しています。詳細はこちらhttps://arcarrsgitzo.com/made-stand-storing-tripod/
夏場はやめたい車のトランク保管
車のトランクに三脚を積載しておくと、いざ必要になった時に非常に便利です。もちろんそれは分かります。
しかし夏場60度にもなる高温場所での保管は、三脚の各可動部に使用されているグリースに悪影響を及ぼす可能性が考えられます。
グリースは基本的に高温となるとちょう度が柔らかくなり、必要な粘りを失うことで湿布性を失います。 耐熱温度を超えると酸化が進み、酸化が進むとグリースは硬化します。
また三脚には水準器が付いていることがあります。
水準器は精密機器ですから基本的には温度変化の激しい場所での保管は避けるべきです。
実際にトランクに放置していた三脚の水準器の液体(アルコールやエタノール)が蒸発していたという話しはネットでググれば出てきますし、中古カメラ店の三脚コーナーでもたまに液体抜けの水準器付きの三脚を目にします。
トランク保管との因果関係は分かりませんが、悪影響を及す可能性が高いので、三脚の保管方法として特に夏場はお勧めしません。

私の所有している高精度水準器「PLV-001」の取扱説明書には「気温50℃以下の環境でご使用ください。晴天下の自動車内など、高温になる場所に放置されますと水準器が破損致します。」と記載があります。
三脚のナットロックの締め方
三脚を展開する時に良く見かけるのが、ナットロック全部を握って一気に解除する方法。これは特に問題ありません。
しかし上側のロック(雲台側)が緩んだ状態で、下側のロック(石突側)を操作するのは避けた方が良いと思います。
なぜならナットロック内部の空転防止機構に大きな負荷を与えるからです。
現在非常に多くのメーカーが採用している空転防止機能は、三脚側のカーボンの突起と「ホース」と呼ばれる薄いプラスチック製パーツです。
ただちにダメージを与えるほどの強い衝撃ではありませんが、ダメージが蓄積されるとホースが欠けてしまったり、カーボン側の突起がすり減ってしまい、共回りの原因となる可能性があります。
一気に緩めて伸ばした脚を下から締めていきたい気持ちは分かりますが、三脚を想うならばナットロックは上から締めていく方が良いと思います。

私が持っていたGitzo GT2540FTもこの症状で悩まされました。
メンテナンス 〜ネジの固着や緩み〜
三脚を使用していますと可動部のネジが固くなったり、逆に緩々になってしまうことがあります。
そのまま放置して使用し続けると故障の原因となってしまうので、展開時に違和感を感じたら、なるべく早めに調整しましょう。
もっとも不具合が出やすいのは開脚ネジです。大抵はこのネジを調整する工具が付属していますが、精度が悪い工具が付属していることが多いので、ちゃんとしたメーカーの工具を持っていた方が安心です。
特にGitzo三脚に付属しているヘックスローブレンチT25は精度が悪く、油断していると調整時に舐めてしまうので、特に注意が必要です。当ブログではPB SWISS TOOLSのヘックスローブレンチの使用を推奨しています。
メンテナンス 〜グリース交換〜
三脚の各可動部にはグリースが塗布されています。
しかしグリースは劣化する物です。快適に使用していくためにはグリース交換が必要です。
グリース交換のタイミングは使用頻度によりますが、ごく一般的な環境下での使用であれば2〜3年に一度、滅多に使わない人なら5年に一度で良いでしょう。
ただしグリース交換後すぐであっても、泥の中や海水に脚を浸けて使用した場合は帰宅後、すぐに行った方が良いと思います。
グリースアップする前に行わなければいけない事、それは「古いグリースを取り除くこと」です。古いグリースは性能が低下している可能性が高く、それと混ざることで性能が低下するばかりか、硬い塊となることがあります。これではメンテナンスしている意味がありません。
古いグリースの清掃方法はキッチン用中性洗剤を薄めた水で、使い古した歯ブラシなどを使って溝の内側まで綺麗に古いグリースを落とします。頑固な汚れにはプラスチックセーフのパーツクリーナーを使うのも悪くないと思います。
さていよいよグリースアップですが、塗布するグリースの量は少なすぎても多すぎても良くありません。
特に多すぎるとナットロックからグリースがはみ出してしまい、ゴミや砂を付着させ故障に繋がる可能性が高まります。また手や機材を汚してしまう原因にもなります。
それではその適量とはどれくらいか?と言いますと

画像はReallyRightStuff公式動画「Tripod Maintenance」よりスクリーンショット
このくらいです。米粒一粒分くらいを目安にネジ山の最下部に塗布しましょう。薄く伸ばしても良いですし、伸ばさずそのままナットロックをくるくる回すだけでもグリースは自然に伸びて馴染んでくれます。
メンテナンス 〜故障した場合〜
不具合や小さな故障を放置し、無理やり使用を続けると致命的なダメージに繋がったり、他の部分にも悪影響を及ぼす可能性があります。
三脚を長持ちさせるためには、故障を放置せず補修することが大切です。
プロ用三脚として販売されている三脚であれば、大抵はメーカーが補修部品を扱っています。
今では珍しい国産三脚として有名なHusky三脚はネジ1本から購入可能ですし、GitzoやManfrottoにはスペアパーツ専用のwebサイトがあるくらいです。
プロ用三脚は購入時の出費はそれなりですが、メンテナンスしながら一生涯使い続けられるので、三脚の使用頻度が高い人ほどコストパフォーマンスも高いと言えます。
まとめ
以上、三脚を長持ちさせる要点をまとめます。
■三脚を長期保管する場合はできるだけ風通しの良い場所を選び、脱着可能なストラップやゴムグリップは外しておく。
■三脚の保管方法として車のトランクはお勧めしない(特に夏場)。
■上側のロック(雲台側)が緩んだ状態で、下側のロック(石突側)を操作するのは避ける
■ネジの固着や緩みを放置しない
■適切なタイミングでグリース交換を行う
■小さな不具合・故障を放置しない
以上、6点を守れば三脚を長く快適に活用し続けることができるはずです。


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