今回は「耐荷重」のお話です。三脚雲台選びで結構失敗が多いのが「耐荷重」です。今回はなぜわざわざ公表している数値のせいで失敗してしまうのかを書きたいと思います。
耐荷重に決まりはない
三脚や雲台にはメーカーから公表されている「耐荷重」というものがあります。実はこの耐荷重、各社で統一された基準があるわけでありません。メーカーが勝手に独自の試験をして、勝手に数値を決定しているわけです。
たとえば雲台を水平垂直に立ててその上に10kgの機材を載せたとします。そしてもう1kg重りを載せたところ機材がお辞儀してしまいました。この時、A社は耐荷重をギリギリの10kgと公表しました。B社は安全性を考慮して8kgと公表することにしました。C社は実際に快適に操作できる重さを調べ、5kgとしました。このようにメーカーの考え方の違いによって、たとえ同じ雲台であったとしても耐荷重の表記も違ってくるということです。
力のモーメント
小難しい理論は抜きにして、上の図のように5kgの重りであっても、支点からの距離が離れれば100kgの重りと釣り合うことは、ほとんどの方がご存知だと思います。
つまり上のようにたとえ同じ重さの機材であっても、固定地点(支点)からのレンズが離れてしまう望遠レンズの場合、雲台に掛かる負荷が変わってしまうわけです。
例えば上のような場合、全く同じ重さの機材にかかわらず、雲台にかかる負荷は圧倒的に左側の方が大きくなります。
もっと簡単に説明しますと、1.5リットルのペットボトルの水を持つとします。重さは1.5kgです。厳密にはペットボトルの重さが加わりますが、一旦無視して下さい。
そのペットボトルを水平に持ち上げてみてください。普通に持っていた時と比べて、腕と肩にかかる負担が大きくなったはずです。当たり前ですが、持ち上げたからと言ってペットボトルの重さは変わったりしない。にも関わらずです。
そしてこれが「最大耐荷重3kgの雲台」に3kgの機材を載せても、快適に操作が出来ない理由です。メーカーの公表値に偽りがある訳ではなく、耐荷重の考え方の違いによるものです。
「耐荷重」はあくまでも「おおよその目安」
このように「耐荷重」はあくまでも「おおよその目安」です。一般的には雲台の場合は表記の耐荷重の半分まで、三脚は1/3までの機材の積載が理想と言われています。
しかし私としてはこの一般的な考え方に対しても懐疑的です。実際に使ってみると半分の重量でもダメだったり、逆に公表の耐荷重以上載せても問題ない場合だってあります。やはり一番良いのは売り場などで実際に試してみたり、実際に持っている方に触れさせてもらったり、それが叶わないなら、せめて実際に使っている方の意見を聞いてみることです。
まとめ
今回の記事で伝えたかったことは耐荷重はアテにならないということです。例えば「今持っているハスキー雲台の耐荷重が10kgだから、耐荷重25kgのSIRUI K-20Xを買ったらもっと安定するはず」と考えて買うと大失敗します。なぜなら固定力や耐荷重だけならハスキー雲台の方が何倍も強いからです。このように耐荷重は何の参考にもならないことが多いので、同一メーカー内での比較で見る程度にとどめておくと良いでしょう。
いつか全メーカーで協力して、試験の規格を統一してほしいですね。参考になりましたら幸いです。ではではー
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コメント
耐荷重とは壊れない荷重の事です。
使い物になる荷重ではありません。
使用条件によって人によって「使い物になる」基準が違います。
したがってこの耐荷重の何分の1が「俺の基準」と考えます
耐荷重(壊れない荷重)さえ正しく表示してくれれば
すべて丸く収まります。
あさん、コメントありがとうございます。耐荷重の考え方はメーカーによって異なります。ハスキーは「動荷重が10kgで、静荷重なら100kgだ」だが、雲台は動かすものなので、動荷重で記載する方が良い。とトヨ商事の社長は言っています。私もこの意見には賛成で、受け取り方が人によって様々である以上、動かす事を前提に「耐える荷重」を記載してほしいと個人的には思っています。
まあ、三脚全体の重さ(脚部+雲台)の半分以下のものなら安全に乗っけられる程度に考えておかないと。
割りばしみたいに細い三脚に望遠ズームつけてるって時点で写真をバカにしすぎだよ。
写真家さん、コメントありがとうございます。三脚に関しては不要論を唱える方も多いですしね。手持ちの補助的感覚で使われている方もいらっしゃるのかもしれません。