ストロボ導入のすすめ

ストロボは難しい?

ストロボがあると色々作品の表現の幅が広がります。しかし多くの方がストロボを「難しそう」と感じているように思います。その理由のひとつがメーカーの説明です。

まずはNikonのスピードライトSB-5000の文章を読んでみて下さい。

D5、D500との組み合わせで、ニコンクリエイティブライティングシステムの新機能「電波制御アドバンストワイヤレスライティング」、「ユニファイドフラッシュコントロール」に対応します。世界初クーリングシステム」を搭載し、連続発光できる回数も大幅に向上。
※原文引用元 スピードライトSB-5000

分かる人には分かりますが、普通の人には何のこっちゃ分かりませんよね。そもそもニコンはストロボ初心者に、SB-5000を売るつもりは毛頭ないのかもしれません。

初めに言っておきます。ライティングは確かに難しく、完璧に光をコントロールするには経験が必要です

しかしストロボという機械自体はシャッターのタイミングに合わせて光るだけのアクセサリーです。ストロボを使うだけなら非常に簡単なんです。まずは身構えずに手に取ってみることがライティングの第一歩だと思います。

まず最初に覚えることはふたつだけ

発光量

1/1(フル)が一番強い発光量で、それより下の数字(1/2~1/256)にいくに従って光の量も減っていきます。下の画像を見れば一目瞭然です。

自分自身で強さを設定するモードがマニュアルモード(M)、機械任せにするのがTTLモードです。

照射角

照射する角度、つまり範囲ですね。これも見てもらった方が直感的で分かりやすいと思います。

ほらすごく簡単だと思いませんか?そう思った時が買い時です!

ガイドナンバー(GN)とは?

さていざ買おうと思ったとたん、ストロボの購入を躊躇わせる、難解な専門用語が立ちはだかります。それがガイドナンバー(GN)です。

しかしこれまた批判を恐れず簡潔に言いますと「ガイドナンバーの数字が大きければ大きい程、明るく発光できます

つまりGN28よりもGN34の方が、明るく照らす事が出来るストロボです。しかしニコンとキヤノンでは似たような強さのストロボだとしても、ガイドナンバーの数値の表記が違うので注意が必要です

例えば「Nikon SB-900」のガイドナンバーは34ですが、同クラスの「Canon 580EX2」のガイドナンバーは58です。

先ほどの私の簡潔な説明からいくと、Canonのストロボの方が、かなり明るいということになります。しかし実際はこの2機種のガイドナンバーはほとんど変わりません。

なぜこういう事が起こるのか?

決してメーカーは嘘の表記をしている訳ではありません。というのもストロボはレンズの焦点距離に合わせて照射角度が変化するようになっているのです。

さっきのこれです。つまり35mmでストロボを使うのと、105mmでストロボを使うのとでは、同じ機種であっても得られる光量が違うのです。

と言う訳で、Canonは105mmの照射角度、Nikonは35mmの時の照射角度でガイドナンバーを表記しているのです。

さてさてここまでご理解頂けたら、いよいよストロボ界の悪の権化「ガイドナンバー」をクリアしましょう。

ガイドナンバーの見方

被写体までの距離(m) × 絞り値(F値) = GN(ISO100)

という式で最適なガイドナンバーのストロボを選ぶことができます。すごく簡単ですね。

もしもあなたが5.25m先の被写体をF4で撮りたい場合は「5.25×4=21」となり、GN21のストロボを買えば良いということになります。NikonであればSB-400で大丈夫ということになります。(35mmの画角、ISO100で撮った場合)

ストロボがあったらどんな撮影ができるの?

さてガイドナンバーというモンスターは倒しました。今度はストロボを使えばどんな撮影ができるのかご紹介しましょう。

暗い場所でも明るく写せる

これは誰もが思いつく当たり前の使い方ですね。

雨や雪を写せる

なるべくガイドナンバーが大きいものを選ばれると、雨や雪は写りやすいです。

アイキャッチを入れられる

大抵のストロボにはアイキャッチパネルというものが搭載されています。直接被写体にストロボを向けると、写りが平面的になったり、強い影を作ったりするので、バウンス撮影をするのですが、そのせいで目に印象的な光を届けることができなくなってしまいます。バウンス撮影をした場合でも、アイキャッチを作るために搭載されたのがアイキャッチパネルです。

※これは数箇所、丸穴を空けた厚紙にストロボを照射させて撮影。

動きを止められる

ストロボ光は瞬間光ですので、被写体の動きを止める事ができます。でも「被写体の動きを止める」と言われても意味がよく分かりませんよね。では論より証拠。実際に動きのあるものを撮影してみましょう。まずはストロボを使わずに撮ってみます。

なにやら怪しい物体が宙に浮いていますが、ブレブレで何だか分かりません。シャッタースピードは1/25です。では部屋の灯りを消してストロボに変えて撮ってみましょう。

見事に動きが止まっていますね。いいえ、正確には「一瞬止まっているように見えるブレ写真」です。ちなみにこの写真のシャッタースピードも、先ほどと同じ「1/25」です。

なぜこのような写真が撮れるか?というと、まずこの写真は暗い室内で撮られています。ストロボも部屋の灯りも付けずに撮影すると真っ暗になります。

しかしLightroomで露光量を上げてやるとブレですがしっかり写っています。

つまり1/25秒で撮っている限り、部屋が明るかろうが、暗かろうがブレて写っているのです。しかしストロボ光は一瞬です。その一瞬ストロボが光った瞬間のみを切り取ってイメージセンサーが記録するので止まったように写るのです。

ストロボに付いていると嬉しい機能

ハイスピードシンクロ

基本的に大抵のストロボや、内蔵フラッシュを使った撮影では、シャッタースピードに上限があり、1/250秒くらいから制限がかかってしまい、それ以上に上げる事ができません。ハイスピードシンクロ撮影に対応したストロボを買うと、1/250より高速シャッターでもシャッター幕に干渉することなく撮影できます。ハイスピードシンクロ撮影では、次のような撮影が可能となります。

  • 逆光下でのポートレート撮影でモデルさんの顔を明るくする。
  • ミルククラウンなど人の目で見えないスピードの動体が撮れる。

屋外で撮影していると逆光で撮らなければならない場面に出くわします。再現するとこんな感じです。後に照明(太陽)があり、手前に被写体があります。光が当たる面が明るくなり、光の真後ろにあたる手前が暗くなります。いわゆる逆光写真です。暗くなった被写体に向けてストロボをセットするだけ。こんな感じで逆光下でも被写体を明るく写すことが可能です。

もう何年前に撮ったものか忘れましたがNikon SB-800というストロボを買った初日に撮ったミルククラウンです。ハイスピードシンクロ対応のストロボを選ぶとこういった作品撮りを楽しむことができます。

ワイヤレス発光

カメラのホットシューから外してライティングすることを「オフライティング」と言います。シンクロコードを使うという手もありますが、どうせならワイヤレス対応の方が便利です。カメラボディに内蔵されたポップアップフラッシュをトリガーにして発光させる「スレーブ発光」という機能が搭載されたものや、カクタスやNissinなどから販売されている無線式の送受信機を使って発光させる方式が有名です。

カメラからストロボを離すことによって、よりドラマティックなライティングが可能となります。

ストロボと一緒に買いたいアクセサリー

IRパネル SG-3IR

カメラ本体の内蔵フラッシュをトリガーにしてストロボをワイヤレス発光させる「スレーブ発光」というものがあると、先ほど書きました。しかしこのトリガーとなるプレ発光が、被写体に映り込んでしまうことが、商品撮影などでは多々あります。

液晶部分に盛大に内蔵フラッシュが写っています。これをNikonから出ている「IRパネル SG-3IR」という製品を使えば簡単に改善することが出来ます。

これをカメラのホットシューに装着してポップアップフラッシュに覆いかぶせて使います。

このようにプレ発光を遮ってくれます。すごく便利です。

カラーフィルター

色温度変換用や演出として使います。例えば空の色を青くしたくてホワイトバランスを高く設定した場合、メインとなる被写体まで青くなってしまいます。それを補正する為に黄色のフィルターをストロボに装着して照射することで、背景のみ青く演出できます。

背景に黒ケント紙をセットし、赤やブルーのフィルターを装着したストロボを照射すると、素晴らしい彩度の背景を作ることができます。

ワイヤレスフラッシュトランシーバー

CactusやNissinAir、GODOXなど各社から出ているワイヤレスフラッシュトランシーバーがあれば、非常にオフライティングが快適になります。内蔵フラッシュによるスレーブ発光方式は屋外では日中の反応が非常に悪いのですが、無線式だとそういったことがありません。

ソフトボックス

ストロボを直射するとどうしても写りに違和感を感じます。現実にはあり得ない光量の光が真っすぐにぶつかってくるのですから、違和感を感じるのは当たり前と言えば当たり前です。ソフトボックスやアンブレラはストロボ光を柔らかく拡散し、回してくれるので自然な描写となります。これはぜひストロボとセットで買ってほしいと思います。

ライトスタンド

ソフトボックスを買うならスタンドも必要です。Nissinのライトスタンド「LS-50C」は非常に軽くてコンパクトで、かつ「実用的」です。

まとめ

長々と書いてしまいました。本当はもっともっと面白い使い方についても書きたかったのですが、それはまたの機会に書きたいと思います。ストロボは最初は取っ掛かりにくいですが、使ううちにどんどん面白さや奥の深さがあり、色々なシーンで撮影の助けとなってくれます。ぜひストロボを使ってクリエイティブな世界を知って頂く一助になれば幸いです。ではではー!

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haku
こんにちは三脚フォトグラファー「ハク」です。 当ブログのキャッチフレーズは「探していた三脚と雲台の情報がきっと見つかる!三脚雲台沼ブログ」です。 当ブログを読めば大抵の三脚雲台の悩みは解決できるようになるはずです。 どうぞよろしくお願いいたします!

コメント

  1. philotripus より:

    ハクさん、ビニール袋のアドバイスありがとうございます。たしかにプレート部分を破らずかぶせるほうが使っていて便利ですね。でもビニール袋は底を破ってレンズ側にするほうが自分には向いていました。植物園の高温多湿室に入るときは必須です。ついでに雨の日にはアルカスイスの雲台にも小さめのビニール袋かぶせて使っています。exifレリーズ回数とニコンセンターで聞く回数の違いはjpgでないと比較できないので、次回にしようと思います。ところでコードだと不便なので、無線トリガーを導入したいのですが、CactusかNissinAirかGODOXかで迷っていますが、紹介されているGODOXの使い勝手はどうでしょうか。教えていただけませんか。なおスピードライトはニコンSB5000でマニュアル発光にします。急ぎませんのでよろしくお願いします。

    • haku haku より:

      philotripusさん、GODOXの使い勝手ですが、CactusもNissinAirも使ったことがないので評価として正しいかどうか分かりません。また普段は屋内使用がほとんどのため、面倒くさいのでコマンダーモードで撮っているので、屋外でしか使ってないのです。GODOXを使っていて不便だと思うことは近すぎると反応しないことです。たまに反応しないこともあります。安価な中国製ですので、この辺は覚悟された方が良いかもしれません。

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