今回は【 凄腕フォトグラファーコラボ企画 】の第1弾と致しまして、スペシャルゲスト kikiprioさんに協力していただきました!
kikiprio氏
kikiprioさんは、卓越したセンスと技術で様々な名作を輩出し続ける島根県在住のネイチャーフォトグラファーです。その名の通り鬼気迫る作品作りは「素晴らしい」を通り越して畏敬の念さえ覚えてしまうほど。
論より証拠、まずは今回いただいた作品「星を見るひと」をご覧いただきましょう!
上下パノラマ
上段:赤道儀による恒星追尾 ISO800 16mm F4/SS3分
下段:ISO800 16mm F4/SS3分
自撮り(部分合成) ISO1600 F2.8/SS1秒
この素晴らしい作品についてkikiprioさんにインタビューさせていただく事となりました。当インタビューで場所・時期・時間帯・機材構成・F値・SSを惜しみなく公開しています。だからと言って簡単にこの作品のように仕上げられるという訳ではありませんが、それでもきっと多くの方の今後の作品作りのヒントとなるはずです。
「不可能を可能に」困難から目を背けず挑戦すること
素晴らしい上下パノラマ作品ですね。これまでのkikiprioさんの作品とも少し雰囲気が異なる様に感じました。何か違ったアプローチがあったのでしょうか?
そうですね。ここは島根県松江市の観光名所の一つで弁慶島(亀島)と言われる島です。夜は対岸に見えるべた踏み坂(江島大橋)のライトアップや、市街地の光害がひどく、星を撮るにはまったくもって人気がない撮影ポイントなんです。カメラ友達と一緒にここから狙うとどうなるだろうとロケハンをするくらいの気持ちで行きました。そしたらまあひどい光害でした(笑) でも島のシルエットは素敵だし、天の川なんて全然見えないけれど、もしかしてなんとか出来るかも知れないと思って撮影しました。まずそういった場所で撮ったと言う事が、これまでとの違いのひとつですね。
普通であれば光害が酷いと分かっている場所で天の川の撮影なんて躊躇ってしまいますね。敢えて攻められた事に理由はあるのですか?
もちろんです!光害があって画にならないと皆が思っているということは、まだここは撮影スポットとして新鮮だという風に受け取ることができます。そして俺にはこの場所が「光害があっても画になる場所だ!」という自信がありました。光害を避けることがセオリーという常識を覆すことが目標でした。
なるほど。たしかに写真撮影には「~しなきゃいけない」「~であるべきだ」というような 作法が多いような気がします。しかし常識があるということは、そうしないと「失敗しやすい」もしくは「難しい」という事でもあると思います。簡単では無かったのではないですか?
そこは経験もありますが、頭の柔軟さで何とかなるものです。今回の場合、光害もあって前景を持ち上げる必要がありました。どうせ持ち上げるのであれば!と思い切って常備していたランタンを取り出し、自撮りを敢行。前景も持ち上がり、画にもグッとストーリー性を持たせることができたと思います。
本来なら害となるはずの街明かりを、作品の一部として取り入れ、光害による難しい状況をアイデアで乗り越える。この作品の星を見る「ひと」が力強く映るのも、そういった困難に立ち向かうkikiprioさんの作品への意気込みが、伝わってくるからかもしれません。
「あれはただのラッキーだった」経験で幸運は味方にできる
天の川をいれて綺麗なS字構図となっていますね。これはやはり狙って撮影したのでしょうか?
いいえ幸運でした。もちろんある程度予想はしていましたが、GPVの予報は真っ白でしたし、構図も完璧に予想ができていた訳ではありません。
そういえば、当日は風が強かったそうですね。GPVの予報もそうですが、あまり天気は良くなかったのでしょうか?
いえ、当日は快晴でした。しかし午前1時にはGPV真っ白の予報でした。まあ夜風に当たりに行くかというくらいの気持ちでしたが、結果は快晴。気温は16度くらいでしたが少し肌寒かったです。撮影時刻は23時~2時頃で、天の川が出始めたのは1時頃。風は強かったですね。前景が近かったので、風でユッサユッサと揺れ動いていました。
特にラッキーだったのは、午前1時頃から街灯りがだんだん暗くなって光害が減ったという事です。元々1時で曇る予報だったのですが、風が強かったため、薄雲程度なら流れるだろうと感じていました。天の川もしっかり撮れていたので大満足でした。
「幸運だった」そう謙虚に語るkikiさんですが、多くの経験を積んでいないと幸運にたどり着けません。その多くの経験則が勘を働かせ結果に結びつきます。GPVの予報にしても今日は絶対にダメなのか、どのくらいの可能性を孕んでいるのか、そういった微妙な空気感を読み取ることは初心者には難しいでしょう。
何度も失敗を経験し、学び、得た経験は、自然と血となり肉となり、やがて幸運にも結びつくのです。
「強風を不運にしない」妥協しない機材選び
今日は風が強くてツイてなかった。。。こういう声を耳にします。しかし本来ならブレてしまうような強風下でブレを最小限に抑えることができたのは、Kikiprioさんの機材を選ぶ目が確かであることが伺えます。
私は機材に関しては人一倍詳しいのですが、私からみてもkikiprioさんの機材選びは非常にレベルが高いです。その理由はほとんど妥協していないことが挙げられます。重い機材は不安定になりがちです。その機材を支えるためには、さらに重い機材でカバーするしかありません。
しかし現実は体力的理由や経済的理由で、妥協してしまうことがほとんどでしょう。
山に登るときは誰だって1型か2型の軽い機材で済ませたいものです。しかし彼は作品のためなら躊躇わずに5型を持って登ってしまうような人なのです。
ネイチャーフォトグラファーの作品は「良いロケーション」でさえ撮ってしまえば、後はフォトショップなど「画像編集ソフト」を使って簡単に作品作りをしている。と誤解している人が多いと思いますが、現実はそんなに甘いものではありません。
ダメな写真を何枚合成したって、人を感動させる作品には仕上がりません。甘えを捨てて妥協しない機材選びをすることで、足場の悪さや風の影響を軽減できます。こういったこだわりの機材選びもkikiprioさんの作品のクオリティを高めている秘訣のひとつでしょう。
「星を見るひと」撮影機材
カメラ:SONY α7R III ILCE-7RM3+RRS α7R III用 Lプレート
レンズ:SONY FE 16-35mm F2.8 GM SEL1635GM
三脚・赤道儀
赤道儀:ケンコー スカイメモS+アリガタプレート+バランスウェイト
極軸調整用微動雲台:ゴニオヘッド雲台+自作35度ベースブロック
レベリングベース:RRS TA-3 レベリングベース
三脚:GITZO システマティック 5型 カーボン 6段 ジャイアント GT5562GTS
ジッツオのシステマティック5型は現在市販されている三脚の中で、もっとも強く大型な三脚といって過言ではありません。スカイメモは非常に重い機材ですので、それを支える三脚は安物では務まりません。
私が設計&制作を担当したゴニオヘッド。非常に剛性に優れた微動雲台です。ただし、今回のような撮影においてはゴニオヘッドの下段(ロール)は実際には不要でした。今回の撮影で必要なのはピッチとヨーの微調整です。
いかがだったでしょうか?今回はご縁があって当ブログに作品を寄稿していただきました。
kikiprioさんの作品に対する並々ならぬ情熱が少しでも伝われば、と思い記事にしましたが、正直、うまく伝えきれなかったように思います。やはり芸術に陳腐な言葉は必要ないという事でしょう。
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