海外フォトグラファーのような写真が撮りたいあなたにこっそり教えるパノラマ撮影のススメ

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はじめまして。今回は縁あってハクさんのブログに寄稿するという機会をいただきましたsaizouと申します。

今回はパノラマ写真の魅力について、微力ながらみなさんにお伝えしようと思います。

海外フォトグラファーのような写真が撮りたい

僕は海外のフォトグラファーの撮る風景写真がすごく好きでして、自分もそんな写真が撮りたいなと思っています。海外のフォトグラファーの写真が日本のそれよりいいとか悪いとかではなく、完全に個人的な好みです。

ただ、実際撮ってみると彼らが撮るようなダイナミックな写真が撮れない。もちろん日本と海外ではロケーションや空気感も違います。海外のフォトグラファーはフォトショップでのレタッチもガンガンやっています。

今まではロケーションが違うから、レタッチが違うから海外のような写真が撮れないんだと考えていました。

けれど、果たしてそうなのか?海外フォトグラファーの写真は海外だからこそ撮れたのか?とずっと考えておりまして。たくさんの写真をいろいろ眺めながら、これもしかして日本だってできるんじゃないのかな?と思った次第であります。

構図の作り方がちょっと違う

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そうやって、いろいろ考えて撮ってみた写真がこちらです。わりと「海外っぽい写真」が撮れたのではないかな?という思いがあります。

こちらの写真、レタッチもやってますしNDフィルターを使っての長時間露光もしています。ただ、一番こだわったポイントは構図なのです。

海外のフォトグラファーは「近景・中景・遠景」をしっかり意識している

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「近景・中景・遠景」を意識するといい、なんていうのは構図の基本中の基本でみなさんもよくご存知かもしれません。ただ、このあたりまえのようなことなんですが、海外のフォトグラファーというのはかなり意識してやっているのではないかと思っています。

とくに、彼らが一番に意識しているのは近景の作り込み

あくまで主題は中景、遠景なのですが、それらを引き立てるための近景を何にするかというのをめちゃくちゃ考えているのではないかと思っています。

視線の誘導を意識した、近景・中景・遠景作り

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近景を作り込む。これは視線のスタートをハッキリと意識させることです。そして、スタート位置になった場所から視線をうまく誘導していく。この写真では手前に配置された岩が視線のスタートです。

独特の形状をした岩をしっかりと大きく写すことでインパクトが生まれます。インパクトのあるポイントというのは注意をひきつけ視線のスタートとなります。

この近景からスタートとした視線は岸壁に沿って誘導されていき主題である灯台にぶつかります。

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主題とぶつかった視線。

そこからは流れていく雲がさらに視線を誘い、画面の上部へと流れていきます。

ここで大事なのは「視線のスタートである近景」がしっかりと描かれている、ということです。

視線は手前から奥へと向かう

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写真の見方にはいろいろあるので一概にこうとは言えませんが、多くの場合視線は手前から奥へと向かっていきます

ふらふらとしている視線をしっかりと誘導するために、手前の近景をしっかりと作り込むことでまずは何を見たらいいのかのきっかけを、写真を見る人に与えることができます。

構図の中にS字やC字などの曲線を意図的に入れる

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S字構図。こちらも構図を勉強しだしたら、真っ先に解説される構図ですが、これも海外のフォトグラファーはかなり意図的に作り込んでいます。それはやはり、写真を見る人の視線をきちんと誘導できるようにです。

構図の中にS字やC字をいれることで人はついついその流れに沿って写真を見てしまうのです。

もちろん、このへんは構図の基本のキであって今更何をと思われるかもしれません。

しかし、このS字というのはハイライトの当たり具合などでも表現できます。そして、ハイライトはPhotoshopなどでレタッチすることでさらに意図的に表現することが可能です。

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こちらはこの写真のレタッチのビフォアアフターの様子です。

もともと画面中央部に木道のラインがあるのですが、これだけだと視線を誘導させるにはちょっと弱いです。

ここにハイライトを書いてやることで意図的にS字構図を画面の中に描くことができます。

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この写真では近景の作り込みができなかったのですが、その分一番の明るい部分を手前に持ってきてそこから流れるようにハイライト描きます。途中で構図の中でのラインである木道にぶつかりそこから遠景の山へと視線が流れていきます。

また、湖面や山には霧が発生しており奥がかすむことで、空気遠近法的に画面内での奥行きが生まれています。

なぜ視線を誘導するのか?

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そもそも根本的なことを考えてみましょう。なぜ写真の中で視線を誘導するのでしょうか?

視線の誘導が意図的にされている写真を見ると、たしかにいいなと感じるのですが、なぜそういった写真をいいなと思うのでしょうか?

そもそも、なぜ人は美しい写真を見て美しいと思うのでしょうか?

それを美しいと思う理由

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写真を構成する要素はいろいろあります。構図はもちろんその中のひとつですし、色の配置の仕方、露出などなど。これらをいかに画面内に整理して配置するか。

そして、それらを考える時、そもそもなぜ人間はそれを美しいと思うのか?という理由を考えてみるのはひとつのヒントになるのではないでしょうか

三分割構図が安定した構図になる理由、リフレクションを美しいと思う理由、マジックアワーに感動する理由。もちろん、確固たる正解はないのですが、自分なりに答えや仮説をもつことでそれらを自分の思ったとおりの意図にはめこむことができます。

僕はこの「美しいと感じる理由」について、生物学的な理由が少なくないウェイトを占めるのではないかと思っています。

生きていく上で必要なことは心地いいと感じる

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例えば腐った食物を食べると人はまずいと感じます。これは腐った食物が体にとって害悪であるからです。焼いた肉をおいしいと感じられたから食中毒のリスクを減らすことができました。

なにかを心地いいと感じられるからこそ、いろんな危険や害悪から逃れられたのではないでしょうか。

そう考えていくと「美しいと感じる理由」というのも、人がこれまでに生きてきて本能的に刷り込まれたものが多いのではないかと考えることができます。美しいものを美しいと感じられることができることが生きていく上で必要だったのではないでしょうか

色彩が豊かなものは果実や花を連想させるからかもしれません。 見晴らしのいい景色を美しいと思うのは天敵の接近をすぐに察知できるからかもしれません。緑色を見て落ち着くのは草木のある場所が生きていくのに適していたかもしれません。

視線を誘導されて気持ちがいいのは?

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人の視線は絶えず動いています。それはいろんな情報を得るため。

危険が潜んでいるような場所では、早期に察知するためいろんなところに視線を走らせるでしょう。

逆に言えば、見るべきものがしっかりと分かっているような状況というのはそういった危険を感じることがなく落ち着いた状況だとも言えるのではないでしょうか

これもあくまで僕が考えた仮説でしかないのですが、それでもこういう仮説を持って画面内の視線の誘導の仕方を考えながら構図を作っています。

また、海外のフォトグラファーの撮影した写真を細かく分解して観察してみると僕らが思っている以上に視線の誘導を計算して構図を作っているのがよくわかります。

視線をしっかりと誘導するための構図づくりにパノラマを使う

視線を誘導されると人は気持ちがいい。視線を誘導させる構図作りのためには「近景・中景・遠景」と「S字・C字」を作りこむ。ということを書いてきました。

そして、いよいよ本題なのですが、こういった構図を作り込むのにパノラマ撮影というのが非常に相性がいいのです

広角レンズがダイナミックな撮影ができる理由

広角レンズというと「広い範囲を写せる」という認識のかたも少なくないのではないでしょうか?ただ、風景写真においては広角レンズというのはダイナミックな遠近感を作るために使用することが大事だと、個人的には思っております。

ちょっと小難しいですが

  • 近くのものはより大きく
  • 遠くのものはより小さく

ような写真には遠近感を感じることができ、ダイナミックな印象を与えることができます。

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この写真なんかがわかりやすいのですが、手前の杭は大きく遠くにいくにしたがって小さくなっていき遠近感を感じることができます。こういう遠近感がある写真というのはダイナミックさを演出できるとともに、必然的に奥に向かって視線を誘導することができますね

S字やC字をうまく構図の中に入れることができるとさらに気持ちのいい視線の誘導をすることができるでしょう。

また、近くのものがしっかりと大きくなるので近景の作り込みもやりやすくなります

つまり、広角レンズを使用すると海外のフォトグラファーが撮るような「近景・中景・遠景」があり「視線を誘導させる」構図が作りやすくなるわけです。

画角の解放

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写真を撮っていると、いつの間にか固定観念がでてきてしまいます。これはこうでなければいけない、みたいな。特別に意識しなくてもそこに物理的な限界があればなおさらです。

例えば広角レンズの広角端。Nikonでいえば14mmが一番広い画角ですね。

遠近感がほしいけれど14mmという広角レンズの物理的な限界にぶつかり、そこがいちばんの広角と思って自分で限界を作ってしまうのです

けれど、その画角から自分の撮影を解放してみるというのも表現のひとつ。そして、その技法のひとつがパノラマです。

パノラマ写真というと横に長い写真を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、今回僕がこれを読んでいるあなたにご提案したいのが「画角を解放するための」パノラマ撮影なのです。

広角端以上の画角を得ることでもっとダイナミックな遠近感を手に入れられる

遠近感が生まれることで、ダイナミックな構図を作ることができるようになります。

14mmを越えるような構図は今のレンズではほとんど撮影することができないのですが、その強烈な遠近感を利用することで今まで見たことのなかった表現が可能になります。

そして、その遠近感というのは近景の作り込みにも影響を与えてきます。

縦パノラマに挑戦してみる

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こちらの写真ですが、縦パノラマで撮影しています。これはTAMRON15-30mmの広角端で撮影15mmを横構図で撮影、縦に2枚つなげています。

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ちなみにこちらは15mmで普通に縦構図で撮影した場合。広角端は周辺に歪みが生じやすいので、近景の部分がいびつになっているのがわかります。岸壁の美しいカーブも画面内に収まりきらずにいます。

もっと後に下がればカーブは入りますが、そうすると上の写真のようなダイナミックさはえられません。

とうことでここで取り入れたのが縦パノラマです。

実際の縦パノラマの写真

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縦パノラマの素材となった写真がこちらです。

2枚めの前景の部分なんかは完全に足元をえぐるように撮影しています。三脚の足がギリギリ入らないくらいの角度です(一部三脚も写り込んでいます)。

ここの海岸は岩の模様が非常に美しく、この模様を前景にしたくて撮影しました。ただ、普通に三脚をたてて広角レンズで撮影したのではこの模様がしっかりと写らないので足元ギリギリから、けっこう低いアングルから撮影しています。

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そうすることで、写真を見た時にインパクトのある前景にすることができました。

あとは主題である灯台を撮影し、後にPCでパノラマに合成。視線の誘導については前述したとおり、足元の岩からはじまり主題の灯台とぶつかり雲で右上に流れていくという構成です。

ちょっとおさらいをしてみます。

海外のフォトグラファーが撮るような写真を撮りたい。そんなときにちょっと意識したいのが「視線の誘導」。

視線を効果的に誘導するのに有効なのが

  • 近景・中景・遠景のしっかりとしたつくりこみ
  • S字・C字を画面内にいれる

という2つのポイントを構図作りの時に意識するということ。

またパノラマ撮影することで強烈な遠近感をえられるので

  • 近景の作り込みがしっかりできる
  • より遠近感のあるダイナミックなS字・C字が構図内に作れる

となるわけです。

どうですか?なんだかパノラマ撮影したくなってきませんか?

日本で海外っぽい写真が撮れない理由

海外のフォトグラファーが撮るような写真に憧れながらも、なんだかそれっぽい写真が撮れない。ずっとこのことに悩みいろいろ考えてきました。

ロケーションの違い

やっぱり日本と海外ではやはり場所自体が違うので、やっぱり難しい部分がたくさんあります。

特に空気の感じがかなり違うのではないでしょうか。日本は湿度も高かったり黄砂の影響があったりと、空気が霞んでいる日がかなり多いです。あまり渡航経験はありませんが、それでも海外の乾燥したカラッとした空気感は透明度も高く遠景にある山々をクリアに写すことができます。

高温多湿の気候では木々も多くなるため標高の低い場所では遠くまで見渡す場合に木が邪魔になることも少なくありません。

電柱や電線も多かったり、家屋がいまいちフォトジェニックでなかったりすることも一因です。

ただ、それでも、もっと気をつけなければいけないのがやっぱり構図ではないのかと思うのです

風景のバストアップしか撮れない絶景スポット

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日本にはたくさんの素晴らしい風景があります。

ただ、こと「海外っぽい」となるとちょっと違う。これなんでだろうとずっと考えていたんですが日本の絶景スポットは「風景のバストアップ」しか撮れないという場所がかなり多いのです。

ずっと書いてきましたが手っ取り早く海外っぽい写真を撮るためには「前景の作り込み」というのがめっちゃ大事になると思っています。じゃあその前景ってどこにあるのか?実は足元にあることがかなり多いのです

海外のフォトグラファーの写真を見ていると足元にある花や岩、象徴的なものを前景にしていることがほとんど。じゃあ、日本でもやればいいと思うじゃないですか?

これがじつは結構難しいのです。

絶景スポットは展望台になっていることが多い

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日本は高温多湿なので国土のほとんどが森林です。何を見るにしても木が邪魔になってきます。それでも展望のいいところは各地にたくさんありますよね?そういう所はきちんと木を伐採して展望を確保しているところがほとんどです。

展望台になっていたり、森を切り開いて遠くまで見れるようにしてあったり。

そうなってくると、キレイにしてあるぶん足元にある近景を見つけることが難しくなるのです。展望台なら柵も邪魔になってきます。

なので、海外のフォトグラファーが足元からえぐるように撮影して近景〜遠景を構図に入れているのに対し、日本ではその足元を写すことができず「風景のバストアップ」しか撮れないでいるのです

実際、絶景スポットと言われるようなところの写真をいろいろ見てみましょう。足元から構図に入れているようなものって実はけっこう少ないことに気づきます。

はるか遠くまで展望があるような場所で主題になるようなものがあって足元から写せる、というところはけっこう少ないんですよね。

絶景スポットで三脚を立ててしまう

これもまた、狭い日本ならではの問題ではありますが絶景スポットではついつい考えなしで三脚を立ててしまいます。なんでかというと、人が集まるような場所な有名なスポットだとすでに構図の正解があったり、さっさと自分の撮りたいポイントを押さえてしまうから。

けれど、ほんとは構図の作り方というのは逆なんですよね。

主題を引き立たせるためにあらゆる可能性を考えて構図を作らないといけません。ハイアングルがいいのかローアングルがいいのか、いろんな場所を歩き回って自分の納得いくポイントを探す。

ですが、絶景スポットだとこれができない。人がたくさん集まってくるような場所は特にそうです。人が入らないような場所、人のカメラに写り込まないような場所を選んでるだけでかなり構図が制限されます。

人がいない場所、展望を得るために切り開いてない場所を選ぶしかない

そうなってくると、既存のいわゆる「撮影ポイント」では海外っぽい写真は撮れない、ということに気づきます。

海外っぽい写真を撮りたい僕たちに必要だったのは、写真の基本に立ち返って徹底的に「美しい構図」を探すことなのです。それは誰もが見向きもしないような場所なんだと思います。

美しい構図を探そう、想像力をかき立てよう

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写真に正解というものはない、そう思っています。

現在ではデジタル処理を含めいろんな撮影の技術や手法があります。様々な可能性をあらんかぎりの想像力をかきたて探していく。画角という枠から飛び出すことのできるパノラマ撮影もそのひとつです。

僕たちは残念ながら目で見るほどの感動を写真に落とし込むことはできません。しかし、カメラにはカメラだからこそ切り取れる世界があるのです。

そんな美しい構図をあなたも探してみませんか?

 


ハク
ハク

こんにちは、hakuです。読み終えた感想はいかがだったでしょうか?凄腕フォトグラファー企画の大トリを飾るに相応しい傑作記事だったと思います。saizouさんのハイレベルな撮影テクニックだけではなく、海外っぽい写真が撮れない理由の深い考察から、果ては写真に対する哲学まで、本当に濃い内容の記事で、きっと読み終えた時にはレベルアップの効果音が聞こえたことと思います。「日本はこういう理由があるから無不可能だ」と諦めてしまわずに、可能にするために考え、試行錯誤し、答えに辿りついたことには、ただただ感服です。ぜひこの素晴らしい記事をSNSなどで紹介してくれると嬉しいです!

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コメント

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