ついにベルボンがアルカスイス互換雲台を発売!Velbon QHD-G7AS レビュー

ついにベルボンがアルカスイス互換雲台を発売!

令和元年に突入して間もない5月24日、ついにベルボンから本格的なアルカスイス互換雲台が販売されました。頑なに自社クイックシューにこだわり続け、かつての携帯電話よろしくガラパゴス化していた日本三脚メーカーの雄「Velbon(ベルボン)」でしたが、ここにきてようやく本格的なアルカスイス互換雲台の発売となりました。

私がYahoo!ブログでブログを書き始めた当時は、こんな日が訪れるとは思いませんでしたので感慨深いです。という訳で私もベルボンを応援すべく入手しましたので、ご紹介したいと思います。今回も手加減なしの辛口でレビューしますよ!

外観

大きすぎるロゴと型番はうるさく感じますが、全体のフォルム、デザインはシンプルです。どこかのメーカーに似せたようなデザインではなく、好感が持てます。特にクランプは肉抜き、デザインともに秀逸で良いなと思いました。最初はダサく感じた謎の組織感漂うロゴも、見慣れると愛着が湧くのが不思議です。パンベースに使われているネジは安易なプラスネジではなく、いじり防止ネジを使っているところが好印象です。ただロゴ以外に「ベルボンならでは」というオリジナリティがないのは少し残念。どこか一箇所、この雲台にしかない機能があれば良かったようにも思います。

スペック

型番:QHD-G7AS / 推奨積載質量:8kg / 高さ:118mm / クランプ:62×48mm / 底面径:64mm / 質量:675g / クイックシュー:QB-7AS / 水準器:なし

サイズや重量はアルカスイスZ1+やReally Right Stuff BH-55、KIRK BH-1、Gitzo GH3382QDなどと同クラスで「大型自由雲台」となります。スペック的には一眼レフ機&400mmF2.8程度までを扱えると思います。

型番は長く覚えにくい上に、英数字の羅列からモデルを想像しにくい点は残念ですね。せめてボールサイズくらいは一目で分かる型番にしてほしかったです。ただ末尾の「AS」はおそらく「ARCA-SWISS」の頭文字を取ったのだと思います。これは分かりやすくて良いと思います。

QHD-G7ASの特徴

  • 雲台のボディ、ボールなど多くの部分はアルミ削り出し。
  • ボールに負荷をかけて動きを調整できる「フリクションコントロール機構」を搭載
  • 水平パンのロック・アンロックを個別で操作可能
  • ネジ変換アダプターが付属していますので1/4と3/8サイズのネジ穴に対応
  • 54mm径の特大アルマイトボールを搭載

まず、アルミ削り出しというのは、現在の自由雲台では当たり前ですので、特徴として記載するほどの事ではありません。フリクションコントロールもこのクラスの自由雲台では搭載していて当然で、逆に非搭載の方が驚きます。水平パンの単独操作も普通ですね。ボールサイズは54mmでアルカスイスZ1+クラスの大型ボールです。特殊コーティングはされていない普通のボールです。

付属品

箱は相変わらずの色気の無さです。ここで経費削減というなら、それも良いでしょう。箱なんて無駄と言えばそれまでですからね。付属品としてアルカスイス互換汎用プレート、ネジ変換アダプター、ネジ変換アダプターを脱着するための工具、滑落防止用ネジの脱着用の六角レンチ、取扱説明書が付属しています。

このクラスの大型自由雲台を使うユーザーの三脚は、取り付けネジが太ネジ(3/8インチ)が多いと思いますから、ネジ変換アダプターは別売でも良いような気がします。その分、満足度を上げてほしいです。

クランプ

平均的なサイズのアルカスイス互換クランプですが、デザインは好みです。ネジのピッチも平均的で、脱着には3捻り程度を要します。KIRKには及びませんが、アルカスイス純正よりも素早く脱着できます。この「3捻り程度」というのが個人的に気に入っています。1〜2捻りでは滑落事故の可能性が高まりますし、4捻り以上だと時間が掛かりすぎます。またキツく締めてもノブが固くなりすぎない点も高く評価したいです。

クランプの欠点としては水準器がついていないこと。丸型気泡式で良いので水準器はつけてほしかったです。あとは光軸合わせ用のセンターマークを「丸点」でも良いので付けてほしかったですね。

上のように丸点が付いているだけでも、Lプレートのセンターマークと位置合わせが可能となります。

商品撮影などの場合はこのセンターマーク同士を合わせるだけで、横構図から縦構図に構図変更してもぴったりセンターに画角を合わせることができます。

他にもパノラマ撮影でノーパララックスポイントに設定したい時や、望遠レンズでバランスを取りたい時の指標としてやはり目盛りやマークはあるべきだと思います。

六角穴付き皿ネジで固定されていますが、クランプ台座が特殊な形状ですので、汎用性がある訳ではなさそうです。他社のクランプとの互換性はないでしょう。

将来的にパノラマクランプや小さいクランプ、長いプレートに対応したクランプ、レバークランプなどを開発して、クランプを交換できるように互換性を持たせてくれると嬉しいですね。ベルボンの従来のユーザー用に、従来のクイックシューシステムにも交換できるとかね。そういうロードマップがあるとユーザーが増えそうな気がします。

メインハンドル

滑り止めはローレット加工(金属に施す、細かい凹凸状の加工)がされています。ハンドルの直径は約36mmでアルカスイスZ1+のハンドルと酷似しています。かなり意識したのだと思います。

そしてちょっと固い!指先だけの力では最大まで締め込めません。締め込むには指の腹まで使ってギュッと握り込んで回す必要があります。もしかしたら個体差かな?と思いベルボンさんに問い合わせて、検品済みの雲台を送っていただいたのですが、大差はありませんでした。どうやら仕様のようです。ただ購入当初よりも使ううちに少しだけ柔らかくなってきました。もしかしたら内部のグリースが行き渡っていないのかもしれません。ヨドバシカメラの展示機(小さなモデル)は全然固くなかったので、個体差というよりもそちらの方が可能性が高いです。

またZ1+と違ってゴム巻きではないため、ハンドルに力を入れにくい事も固さを際立たせる原因です。試しにゴムコーティングを施してみると、かなり握りやすくなりました。

フリクションコントロールの位置も機能もZ1+と一緒です。Z1+には無い波紋のようなデザインを施したのは、設計者の後ろめたさなのかもしれません。

メインハンドルを締め込んだ時の構図のズレはZ1+同様、上下方向に多少はあります。マクロ撮影でもしない限り、気になるほどのズレではないと思います。メインハンドルの固定力(ボールの固定力)は強く、さすがは54mmのボールサイズという感じです。

フリクションコントロール

フリクションコントロールの調整ダイヤルは指の腹で簡単に回るような固さではありません。コインで回せる溝が切ってあり、コインで簡単に調整できるというのは便利ですし、うっかり変更されることも無いので良いなと思いました。他社のと比べても、これは良いなと思いました。

パンノブ

パンノブもローレット加工された丸型です。直径16mmでそこそこ扱いやすい形状です。締め込んだ時のズレやガタはありません。パンの固定力も申し分ありません。

パンベース

120度毎にマークがあるのですが、三角・丸・菱形とそれぞれ形状が異なっており妙に凝っています。目盛りは5度毎にラインがあり、30度毎に数値が刻印されています。これは便利で良いですね。フォントはゴシック体は良いのですが、10度ほど傾けたのはちょっとダサく感じました。

ボール

54mmの大型ボールは、この価格帯の自由雲台の中では工作精度が高く、そして滑らかです。コーティングで誤魔化したような滑らかさではなく、切削精度で滑らかさを実現しているので、良質な操作性は長期間持続してくれそうな気がします。ただしボールを固定する内部部品の素材や仕組みに関してはまったく情報がないので、適切な樹脂・適切な設計で作られていることを願います。

サイズ・重量

アルカスイスZ1と比較してみました。見ての通りサイズはほぼ同じくらいです。

重量はZ1に比べてかなり軽いです。どうやらスペック表に記載の675gというのはプレートや変換アダプターを含んだ重さのようです。

プレート

汎用のアルカスイス互換プレートが付属しています。ただカメラの取付ネジが六角穴ではなく、つまみとコイン式です。簡単にカメラに装着できるというのは確かにメリットと言えますが、それは小型カメラに限った話です。大型機材の使用を想定した本製品では、取り付けにコインや手回しでは、強固な取り付けができません。もちろんつまみやコイン用の溝を設けたままでも構いませんが、追加で六角穴を設けてほしいです。

Really Right Stuffのレバークランプとの相性は悪くありません。Z6用のプレートでは若干緩かったのですが、この付属プレートではキツすぎず緩すぎず、ちょうど良いアリガタのサイズとなっています。これが改良なのか個体差なのか分かりませんが、その点は良かったです。

ただアルカスイス互換雲台を選ぶユーザーはプレートを別途持っている方が多いと思うので、個人的にはプレートはオプションで良いと思います。このプレートを付属させるくらいなら、クランプに水準器を搭載して、目盛りを刻印してほしいです。

懸念点

懸念点はパンロック機構です。ヨドバシ梅田の三脚コーナーには小さなモデルが展示機として3台ほど置いてあるのですが、そのうちの1台のパンにガタつきがあります。これはおそらく雑に扱われる間に、ガタが出始めたのだと思います。しかしもしかするとこの部分が弱点なのかもしれません。新製品ですので耐久性は何とも言えません。

動画

良い雲台と言えるか

先日「良い自由雲台の選び方」という記事で、良い自由雲台とは以下のようにまとめました。

  • アルカスイス互換のクイックシューシステムであること。
  • 互換性を重視するならスクリューノブ式であること。
  • レバー式を使う場合はプレートとメーカーを揃えること。
  • クランプに滑落防止ピンが付いていない方が互換性が高い。
  • メーカー発表の耐荷重はアテにしないこと。
  • フルサイズ一眼レフ使用であれば、ボールサイズは50mm以上が理想的。
  • ボールの滑らかさをチェックすること。
  • 各ロック操作時のズレをチェックすること。
  • 安い製品を検討する場合は、より厳しいチェックをすること。
  • 可能であれば実際に機材を載せて操作させてもらうこと。

ベルボンのQHD-G7ASはこれらの項目をほとんどクリアしていますし、全体的に見て良い雲台だと思います。ですが本製品をアルカスイスZ1+やReally Right StuffのBH-55の廉価版と考えて購入を検討するなら、それは違います。やはり操作性もボールの滑らかさも及びませんし、デザインの格好良さや所有満足度もそんなに高くありません。アルマイトもザラッとした質感で、高級感はありませんしね。別物です。

それでもよく考えてください!実勢価格が2万円を切っているのですよ!

50mm以上のボールサイズの自由雲台で、さらに有名メーカー製というだけで、もう数は限られると思います。これだけのクオリティの製品となると選択肢に含めない理由はありません。ベルボンは本社が日本国内にあるので、サポートに関しても悪くありません。初期不良があったとしても海外メーカー製品よりも安心感は高いと思います。

改善してほしいことはいくつかありますし、様子を見ないと確実なことは言えない部分もありますが、それでもベルボンさん、よく頑張ったと思います。私も当分の間、サブ機として使っていこうと思います。

だから次こそ新製品出たら試させてください!(懇願

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haku
こんにちは三脚フォトグラファー「ハク」です。 当ブログのキャッチフレーズは「探していた三脚と雲台の情報がきっと見つかる!三脚雲台沼ブログ」です。 当ブログを読めば大抵の三脚雲台の悩みは解決できるようになるはずです。 どうぞよろしくお願いいたします!

コメント

  1. crispicture より:

    ハクさん、これ是非レビューお願いします!
    https://shop.nikon-image.com/campaign/ndtp1/index.html

    • haku haku より:

      crispictureさん、こんばんは。
      私の機材では少し頼りない三脚ですね。
      ベルボンのOEM品ですので悪くはないと思いますよ。
      軽量機材をお使いの方でしたら良いかもしれません。

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