カメラボディとクイックシュープレートを締結するネジがしっかり締まっていない場合、一体どういった事が起こるのでしょうか?
答えはクイックシュープレートが 緩んでしまう可能性が高まります。
三脚や雲台がどんなに強くても、クイックシュープレートのネジが緩んでしまったら意味がありません。
しかし、しかしです。じゃあ強く締めれば良いのか?というと、ネジの締め過ぎは、ネジ穴を壊したりカメラボディの変形などといった故障の原因となることがあります。
でもカメラネジって一体どのくらいの力で締めたら良いの?
今回はそんな疑問を調査・検証したいと思います。
各メーカー公表の締め付けトルク
ネジの締結は緩すぎても締めすぎても問題が発生します。そのため「この素材でこの太さのネジだと、この力で締め付けましょうね」という目安となる数値があります。
カメラネジは大抵の場合、雄側も雌側もネジの材質はステンレスや鉄製です。
しかしインサートボルト(雌ネジ穴)が埋め込まれているカメラボディ本体はプラスチック製など柔らかい素材だったりする場合があります。
そのためあまり高トルクで締めると割れや変形の可能性が出てきてしまうのです。
安全のために、各メーカーに締め付けトルクの設計数値を問い合わせてみました。
(ここから加筆・修正あり2021/10/21)
KIRK は「締め過ぎに注意してください」とし、締め付けトルクの設定は無しとのこと。ヴァイテック は非公表ということでした。ハクバ はカメラやネジによって条件が変わるため、規定を設けてないとの事でした。
数値で回答が得られたのはケンコートキナー と ReallyRightStuff 。
ケンコートキナー は 2.7N.m、ReallyRightStuff は 2.25N.mで締めて使うよう設計している。とのことです。
RRSはプラスチック製ボディも想定した数値だと思いますが、マグネシウム合金ボディだったら一般強度区分の半分である「0.5系列(0.5T)」くらいが良さそうです。
1/4”ネジの一般強度区分の締め付けトルクは5.43N.mですので、0.5Tですと2.71N.mとなります。ケンコートキナーの規定値とほぼ一緒ですね。
クイックシュープレートによく付属しているレンチが5〜6cmと短い理由は、コスト面だけではなく、あまり強く締めすぎないように。という配慮なのかもしれませんね。
各メーカー様、お忙しい中ご回答いただきまして誠にありがとうございました!
恥ずかしながら今まで私は締め付けトルクにあまり気にかけていませんでした。「だいたいこれくらいかな?」とこれまで締めていた力加減を計測してみたところ…
それそれは恐ろしい力で締めつけていたようです!これは何とかしないといけません!
コインでネジ止めした場合、締め付け力は足りているか?
さて締め付けトルクが決まったところで、疑問がわいてきました。
「コインで2.25N.mもトルクを掛けられるものだろうか?」と。
KTCのデジラチェは戻しトルクの計測も可能ですので、カメラネジにナットを締結し、ネジを回すトルクを計測したいと思います。
まずは10円玉から目一杯、力を込めてネジを締めます。
指に10円玉の跡が付くくらい力を込めました。それではトルクの計測結果を確認しましょう。
2.04N.m。少し足りていませんでしたね。
では500円玉だったらどうでしょうか?同じように計測してみました。
素晴らしい計測結果です。
「コイン締め」でも500円玉くらい大きなコインであれば、ケンコートキナーの規定トルク2.7N.mに達する。と結論付けたいと思います。
※人それぞれ力は違います。非力な人だと500円玉でも力が足りなかったり、怪力の人なら1円玉でもオーバートルクになる可能性があります。
PBスタビードライバーでネジ止めした場合、締め付け力は足りているか?
さて次は、PBのスタビードライバーでも試してみましょう。グリップをしっかり握り込んで回しました。トルクを計測結果は…
余裕で締まり過ぎでしたね。500円玉は結構指が痛くなるまで力を込める必要がありましたので、マイナスのカメラネジには、コインよりもPBのスタビードライバーの方が楽に締結できます。
六角レンチで手締めする場合、どのくらいの力で締めるべきか?
先ほども書きましたが、ひとそれぞれ力は違います。そのため表現が難しいのですが、まずは短めのレンチを使用するだけでも、かなりオーバートルクを抑えられます。
次に持ち方。端の方は使わず短めに持ちましょう。具体的には六角穴から3〜4cmの位置に人差し指をかけて、親指を曲がり角に添える感じです。
そして一番重要なことは指2本だけで締め付けること。これでかなり力を抑えられますので、ボディ側が故障してしまうようなオーバートルクを防止できるはずです。

指2本だと力強く回しても、オーバートルクになりにくいです。
さて計測結果も見てみましょう。
おー!思った以上に良い結果でした。個人差のある工法ですが、ご自身が力が強いか弱いかくらいは分かると思いますので、それを考慮の上、力加減や指をかける位置を調整されると良いと思います。
やっぱりあると便利!トルクレンチ
きちんとトルク管理をするなら、やっぱりトルクレンチはあった方が便利です。
私は小トルク用(2〜30N·m)トルクレンチは、KTCのデジラチェを使っています。戻しトルクも計測できるので大変気に入っています。
もっと安いトルクレンチもあります。ただトルクレンチは測定範囲が様々です。欲しいスペックが一致しているかをきちんと確認してから購入しましょう。
2.25N.m ってちょっと弱くない?実際に検証してみた
これまでカメラネジを強めに締め付けていた人(私です)にとって、2.25N.mは不安に感じるかもしれません。
こんなに弱い締め付けだと緩んでしまうのでは?と。
そこで「ゴムシート貼り」「面積の小さい」「空転防止機能なし」のクイックリリースプレート「peek dezain standard plate」をNikon Z6Ⅱに2.25N.mで固定して検証してみることにしました。
いかにも「ズレてください」と言わんばかりの設置具合です。
ネジの緩み方向に負荷がかかるようにレンズを斜め上方向、約27度に固定しました。
この状態で放置し、1時間後に再計測してズレていないかを確認したいと思います。
1時間後。0.1度ズレた結果となりましたが、誤差の範囲内だと思います。もしネジが緩んだのだとしたら、0.1度で済むとは思えませんし。
一応念のためにもう30分だけ追検証しましたが、変わらず26.8°という結果になりました。やはり計測誤差でしょう。
まとめ
今回はカメラボディに雲台のクイックシュープレートを取り付ける時のカメラネジの締め付け力について考えてみました。
以下、内容をまとめます。
●締め付けトルクは2.25〜2.71N.mを規定トルクとする。
●コインでネジ締めする場合は500円玉を使用する。
●六角レンチで手締めする場合は柄を短く持ち、指2本で締める。
もちろんこれが正解とは断言はできませんし、カメラボディの形状や素材によっても変わると思いますが、取り敢えずはこのトルク管理で運用してみたいと思います。
また問題点などが見つかった場合は加筆・修正させていただきます。


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